日本農芸化学会誌
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カゼイン複化合物の沈降性とα-, β-カゼイン比との関係
山内 邦男津郷 友吉
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1962 年 36 巻 4 号 p. 340-345

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抄録

脱脂乳中のカゼイン複化合物をその沈降性に従って超遠心分割し各fractionのα-, β-カゼイン比(α:β比)を電気泳動法により比較した.
沈降しにくいfractionほどわずかながらα:β比が増加した.この傾向は加熱乳(85°, 30分加熱)でも同様であったが,加熱乳から分離した各fractionはα-カゼイン峰が非対称的な形を示す点で未加熱乳と相違した.これは変性乳清蛋白質がカゼインとともに沈降したためと考えられる.さらに未加熱乳及び加熱乳から沈降するカゼイン間の差異がレンネット処理によっていっそう顕著になることが示された.すなわち加熱乳より沈降するカゼインはα-カゼイン峰において明瞭な開裂を示すが,未加熱乳より沈降するカゼインではこのようなことはない.
60分の超遠心によって沈降しにくいカゼインfraction中には, α-, βカゼインの他にその中間の易動度を有する成分が認められた.沈降しにくいカゼインfractionに認められる混濁はこの成分に起因することが推定された.
低温で超遠心分離すると非沈降性カゼインfraction中のα:β比が減少する.これは低温におけるβ-カゼインの可溶化によるものと考えられる.この可溶化は低温で1昼夜放置中にさらに進行する.この傾向は加熱乳中においていっそう顕著であった.

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