日本農芸化学会誌
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蒸留酒の製造に関する研究(第4報)
ブランデー製造における膠の差と蒸留原酒の成分との関係について
中村 秀雄村岡 勝昭野田 克彦
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1965 年 39 巻 4 号 p. 129-134

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抄録

(1)ブランデーの仕込に際して醪の差が原酒の成分組成にどのような差異を与えるかにつき検討した.原料として甲州種を用い,混合部,汁液部,圧搾部,粕部に分けて醗酵,蒸留した.
(2)醪の組成で糖分は余り差がなく,酸は圧搾部に多く,窒素は混合部,粕部に多い.醗酵は汁液部が最も遅く酵母の増殖も少ない.逆に粕部は醗酵が速くかつ酵母数も多く汁液部の3倍となる.醗酵醪は酸は圧搾部に多く,粕部はアルコールの生成がやや低い.
(3)粗留液,分留液,再留液ではエステルが最も大きな差を示し,汁液部が最も多く,他の3~4倍量になる.
(4)再留液の紫外部吸収曲線は270mμにピークをもち,吸収の強さは混合部>圧搾部>粕部>汁液部の順に強かった. 220~240mμの吸収は粕部で強い.
(5)ガスクロマトグラフィーの結果は酢酸エチルは,汁液部で他の4~8倍を示した.イソアミルアルコールは混合部,粕部に多い.またイソブチルアルコールに対するイソアミルアルコールの比率は,混合部や粕部は汁液部や圧搾部の2~3倍を示した.
(6)全体的にみて汁液部は不純物少なくエステル多く,混合部,粕部は不純物多くエステル少なく,フーゼル油を多くもつ.香気の点からは汁液部が最も好ましく,ブランデーの仕込に際して醪を区分して仕込むことも一法といえよう.

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