日本農芸化学会誌
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凍豆腐の褐変に関する研究(第1報)
褐変の条件と褐変による成分の変化
本間 清一桜井 芳人
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1967 年 41 巻 1 号 p. 44-49

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抄録

(1)凍豆腐の褐変は高湿度,すなわちRH 85%以上のときに起こりやすい.
(2)褐変凍豆腐のエーテル抽出物についていろいろの測定を行なった結果,脂肪酸のうちリノール酸,リノレン酸が著しく減少し,カルボニル化合物の多量の生成が特徴である.モノカルボニル化合物としてはhexanalとnon-2-enalが多い.またエーテル抽出物中の窒素含量は褐変により褐変前の8~20倍になる.
(3)エーテル抽出残渣のアミノ酸分析の結果では,褐変により塩基性アミノ酸とPro, Tyrの減少ばかりでなく,他のアミノ酸もかなり減っている.
(4)直接還元糖の含量が0.724 mg/gと非常に少ないことから糖による褐変はまず起こらないであろう.
(5)モデル実験として行なった各種脂肪酸とカゼインによる褐変では不飽和の脂肪酸ほど褐変が早く,さらに酸化大豆油とアミノ化合物の褐変では酸化の進行が著しいほど褐変が早い.この場合も高湿度においた方が褐変は進行した.
以上のことがらより凍豆腐における褐変は次のごとく考えられる.すなわち,凍豆腐に多量に含まれる脂肪のうち,不飽和度の高いリノール酸とリノレン酸とが酸化されて多くのカルボニル化合物が生じ,これが蛋白質と反応して,いわゆるアミノ-カルボニル反応を起こし褐変する.そしてこの褐変は,湿度の多い環境においたときに著しくあらわれる.
なお,凍豆腐中において脂肪の酸化がどのようにして起こるかについては未詳のところが多い.また,蛋白質との反応機構についてもさらに追求を要する.

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