1968 年 42 巻 4 号 p. 222-227
PropAを含むリポ酸定量用培地におけるS. faecalis10C1の増殖に及ぼす各種脂肪酸および大豆レシチンの効果を調べたところ,酔酸のほかにパルミチン酸,オレイン酸およびベヘン酸ならびに大豆レシチンがリポ酸代替作用を示した.また,一定量のリポ酸による増殖がビオチンおよび重炭酸の添加により著明に増大した.2-14C-酢酸で増殖せしめた場合,酢酸に基づくCO2の発生はほとんど認められず,菌体にとりこまれた放射能の大部分は脂質画分に存在した.静止菌体による2-14C-PyrAの酸化的脱炭酸を調べたところ,CO2発生量に比し14C02の発生はきわめて微量で,放射能のほとんどすべては反応液中に残存していた.以上の事実より,本実験条件下での S. faecalis 10C1のPyrA酸化の生理的意義は脂質合成につながるものであると推定した.