1970 年 44 巻 9 号 p. 393-400
(1) 酵母の生細胞溶解酵素を得る目的で, 90余種類の担子菌のなかから,寒天培地上の酵母コロニーを溶解する6菌株を分離した.
(2) 6菌株の麩麹抽出液はいずれもS. fragilisの発育抑制作用や加熱処理細胞に対して溶解活性を有することを明らかにしたが,S. cerevisiaeについてはNo. 15, 24および38の3菌株にしか抑制作用を認めなかった.
(3) No. 38菌株の溶解因子はその性質から抗生物質であるものと推定し, No. 24菌株の溶解因子は酵素であるとの推定のもとに,その性質を調べ最適pHは4.0, pH 4~5の範囲で安定であることを明らかにした.
(4) 本溶解因子をS. cerevisiaeの生細胞に作用させると短時間でこれを溶解し,典形的なプロトプラストも形成することを顕微鏡観察によって明らかにした.