日本農芸化学会誌
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鋸屑からのイタコン酸製造工程の研究
小林 秀行中川 允利中村 以正
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1977 年 51 巻 9 号 p. 551-559

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抄録

湿式リン鉱分解に木材糖化後の廃硫酸を利用し,得られた含リン酸木糖液をA. terreusK 26を用いたイタコン酸発酵に供し,露崎らの報告した肥料としてのNH4MgPO4・XH2Oよりはるかに付加価値の高いNa2HPO4・12H2Oとしてリン酸を分離するプロセスについて報告した.含リン酸木糖液をイタコン酸発酵に供し,収率よく発酵させるためには単にイオン交換をすればよいのであるが,負荷が極端に大きくなるので,まず溶存する酢酸をT. B. P.により抽出分離した後, pH 2.5までNa2CO3で中和し沈澱分離後,Ba(OH)2を加えて溶存する硫酸根をBaSO4として除き,続いてpH 6.5までNa2CO3で中和し沈澱を分離後,電気透析してリン酸液と糖液に分離する.糖液には全リン酸の約5%が溶存するが,このリン酸をCa3(PO4)2として除去した後,両イオン交換してイタコン酸発酵させるのが,イオン交換の負荷を低くし経済的である.また,リン酸液はNa2CO3とNa2C2O4を加えpH 9.0としCaC2O4を除き,室温で放置しNa2HPO4・12H2O晶析分離,分離液を再び5°Cに冷却してNa2HPO4・12H2Oを晶析分離する.Na2HPO4の収率は,リン鉱分解後溶存リン酸の95%にできる.Na2HPO4・12H2O中に含まれるヒ素はJIS規格内であった.なお,本研究の概略は第5回国際発酵シンポジウム(ベルリン)で発表した.
最後に,本研究に際し御指導下された東京教育大学農学部小林達吉名誉教授に深く感謝いたします.また,スギ鋸屑を提供された林業試験場,リン鉱石を提供された日産化学富山工場,スギ鋸屑の糖組成を分析された神山由氏に感謝いたします.

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