日本農芸化学会誌
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示差熱分析による澱粉の熱的性質の検討
高橋 浩司白井 邦郎和田 敬三川村 亮
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1978 年 52 巻 5 号 p. 201-206

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抄録

澱粉を水とともに密閉セル中で示差熱分析した結果, DTA法が澱粉の熱的性質,特に糊化温度の測定手段として有効であることを認めた.以下に実験結果を要約する.
1. 馬鈴薯澱粉の示差熱分析における吸熱曲線は約65°Cで1つの明瞭なピークを示した.このとき同時に偏光像の消失を伴うので,このピークは澱粉の糊化を検出したものと考えた.
2. この吸熱のonset温度は昇温速度(2~15deg./min),試料量(0.8~14.3mg),試料濃度(2.6~50.6%)に影響されない.
3. 吸熱のonset,ピーク温度の測定値のバラツキは標準偏差で1°C程度以内である.
4. 各種澱粉の示差熱分析値とアミログラフィー,フォトペーストグラフィーの糊化特性温度と比較したところ, onset温度はフォトペーストグラムの変化点とおおむね近似し,吸熱ピーク温度とアミログラムの粘度変化のinitial,または20 BU時の粘度上昇開始温度と比較的近似していた.吸熱終了のconclusion温度はアミログラムの最高粘度到達温度より一般に高く,示差熱分析が澱粉の糊化過程をより広範囲にとらえうることを示唆した.

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