日本農芸化学会誌
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魚類による化学薬剤の忌避試験法
アユによる洗剤の忌避
立川 涼日高 秀夫
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1978 年 52 巻 7 号 p. 263-270

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抄録

1. 魚類による化学薬剤の忌避に関して,長方形の試験水槽と連続記録装置を組み合せ,効率の良い統計処理の可能な試験法を組み立て,遡上期のアユ(体長約10cm)による洗剤の忌避試験を行なった,
2. 実験・記録装置はScherer(8)の方法に準じ,若干の修正を行なった.試験水槽(1200×180×180mm)に魚1尾を入れ,水槽の左または右から薬液を流し,それぞれ10分間薬液無添加側の水域に魚がいた時間を積算し,忌避率(%)={薬液を左から流したとき,魚が右半分にいた時間(sec)÷600 (sec)+薬液を右から流したとき,左半分にいた時間(sec)÷600 (sec)}÷2×100の式で忌避率を求める.ふつう, 10回の試験の結果を平均する.
3. 体長約10cmの未成魚のアユを用いて同一条件で30回ブランク試験を行ない,忌避率で表わした試験値が正規分布をなすとみなしてもよいことを正規確率紙による検定より確認した.試験回数は1濃渡につき10回が適当である.
4. この試験法によって,遡上期のアユによる洗剤の忌避イキ値濃度(界面活性剤濃度,有意水準0.05)は, LAS製剤=0.11,μg/l, LAS原体=1.5,μg/l, AS製剤=4.0μg/l, AS原体=8.4μg/l, ABS原体=11μg/l,石けん製剤=31μg/lと推定され, LAS, ASとも原体より製剤の方がイキ値濃度が低く,また洗剤の種類により忌避濃度が異なることがわかった.

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