日本農芸化学会誌
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温州ミカンの加熱臭に関する研究 (3)
沢村 正義下田 満哉筬島 豊
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1978 年 52 巻 7 号 p. 281-287

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抄録

温州ミカン果汁の加熱臭成分であるジメチルスルフィド(DMS)の前駆体に関して以下の研究を行った.
(1) 無加熱果汁からS-メチルメチオニンスルホニウム(MMS)を二次元薄層クロマトグラフィーにより存在の確認および同定を行い,また加熱果汁には存在しないことを明らかにした.
(2) 反応速度論的解析によってMMSがDMSの前駆体であることを立証した.すなわち,果汁およびMMS標準溶液においてMMS→DMS反応系は一次反応であり,また両者における速度定数のpH依存曲線がまったく一致した.さらに活性化エネルギーおよび頻度因子も果汁系では35.2kcal・mol-1, 5.37×1016, MMS標準溶液では35.2kcal・mol-1, 6.17×1016となり,良好な一致を示した.
(3) MMS分解物のGC-MS分析の結果,pH 3.2ではホモセリンとDMS, pH 7.5ではホモセリンラクトンとDMSが生成されることが判明し,反応機構を示した.
(4) 反応速度論を応用して,果汁中のMMS濃度が既知であれば任意の加熱条件におけるDMS発生量を理論的に正確に予測することが可能であることを示した.

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