1979 年 53 巻 5 号 p. 157-163
アルギニンのJ1アァージに対する不活化作用について研究し,次のことがわかった.ファージ不活化作用は,アルギニンの濃度, pH,温度に依存する.不活化反応は不可逆的であり,不活化ファージの活性回復はみられない.1価および2価の金属イオン,酸性アミノ酸あるいはヌクレオチドは,ファージ不活化を阻害する.塩基性アミノ酸は,不活化を促進する.金属キレート剤,中性アミノ酸,塩基およびヌクレオシドは,不活化にほとんど影響を及ぼさない.
アルギニンは,ファージDNAと相互作用するが,ファージ・タンパク質部分との相互作用は微弱である.アルギニンの塩基性基あるいはカルボキシル基がブロックされた誘導体の作用を検討し,アルギニンのグアニジノ基がファージ不活化に関与する官能基であることを明らかにした.
以上の結果から,アルギニンのグアニジノ基とファージDNAのリン酸基との相互作用が,ファージ不活化の起因であると考えられた,また,ショ糖および塩化セシウム密度勾配遠心分析ならびに電子顕微鏡的観察から,アルギニンの不活化作用によってファージDNAが放出され,ファージの密度が減少することが示された.
終りにのぞみ,アミノ酸をご提供くださった味の素(株),貴重なご助言,ご討議をいただいた同社中央研究所の城照雄博士,吉永文弘博士,水野宏博士,ならびに本学猿野琳次郎教授に深謝します.
本研究の大要は,昭和52年4月2日,日本農芸化学会大会(於横浜)で発表した.