日本農芸化学会誌
Online ISSN : 1883-6844
Print ISSN : 0002-1407
ISSN-L : 0002-1407
醤油中のN性物質の組成と性質について
佐々木 正治内田 一生吉野 宏
著者情報
ジャーナル フリー

1979 年 53 巻 8 号 p. 255-260

詳細
抄録
醤油からN性物質を分離し,その組成,性質,酵素被分解性について調べ,次の結果を得た.
1. N性物質はセファデックスカラムクロマトグラフィーにより,市販脱脂大豆を用いた醤油から約8%の収率で得られた.
2. N性物質は窒素11%,糖18%を含み,アミノ酸分析の結果,大豆蛋白質と比較して,グルタミン酸,プロリンおよびリジンが少なく,グリシンや疎水性アミノ酸が多かった.
3. N性物質は17万の分子量をもち,きわめて解離会合しやすい性質を持つものと思われ,アクリルアミドゲルディスク電気泳動の結果,そのサブユニットは大豆の主蛋白質とは異なった泳動位置を持ち,約3本の簡単な低分子のペプタイドから構成されていた.
4. pH変化によるN性物質の挙動を調べた結果, N性をもつ醤油と同じようにpH 3.5で混濁が最大となり,大豆酸沈殿蛋白質のpHとは1.0~1.5離れていた.
5. N性物質は麹菌酵素で酵素分解した場合, pH 6.0で酸沈殿蛋白質と同程度の分解度を示したが,加熱処理により,大豆酸沈殿蛋白質の分解度より劣った.
著者関連情報
© 公益社団法人 日本農芸化学会
前の記事 次の記事
feedback
Top