抄録
タンパク質をアルカリ処理した際のプロテアーゼ消化性の減少について検討し,消化性の減少の主原因と思われるアミノ酸残基のラセミ化にっいて,フェニルアラニンを取り上げ,アルカリ処理条件とラセミ化率との関係を詳しく検討した.
その結果,タンパク質をアルカリ処理すると,ペプシン,トリプシンあるいはキモトリプシン単独による消化率が著しく減少した.またこれらのプロテアーゼを順次作用させても,消化率は減少することがわかった.
アルカリ処理により起るフェニルアラニンのラセミ化は一次反応に従い,その速度定数は, 0.1N NaOH, 40°Cの処理において, 1.8×10-4min-1であり,活性化エネルギーは, 18.lkcal/molであった.アルカリ処理条件とラセミ化の速度定数の関係式を求め,実測不可能なアルカリ処理条件におけるフェニルアラニンのラセミ化率を推定した.