1984 年 58 巻 3 号 p. 267-272
アフリカタヌキマメ(Crotalaria zanzibarica)種子より,新たにヒトABO式赤血球を全く凝集させないレクチンを見出した.本研究ではこれについて精製し,血液型および糖特異性を調べた.
(1)レクチンは, 0.15M NaClによる抽出,硫酸アンモニウム部分分画, DEAE-セルロース,ヒドロキシアパタイトおよび酸処理セファロース6Bアフィニティカラムクロマトグラフィーにより,電気泳動的に均一に精製した.精製レクチンはフェノール硫酸反応にポジティブであることから糖蛋白質と推定され,等電点pHは5.3であった.
(2)精製レクチンは,ウサギ,ラットおよびブタ赤血球を同程度凝集させたが,ヒトABO式赤血球を凝集させなかった.トリプシン処理した赤血球を用いた場合, O型>A型=B型の順に凝集させたが, AB型血球は凝集させなかった.
(3)単糖による赤血球凝集阻害試験から,精製レクチンはガラクトース型レクチンに分類された.とくに, C-1位の水酸基の立体配位がα-位の糖がβ-位のそれに比べ,凝集活性を強く阻害した.また, C-6位の水酸基も凝集阻害に重要であると示唆された.