日本農芸化学会誌
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限外濾過法による甘蔗汁の石灰清澄の最適条件の検討
田幸 正邦中山 義勝仲村 実久岸原 士郎河本 正彦
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1984 年 58 巻 7 号 p. 685-690

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抄録

限外濾過器を使用して,新鮮甘蔗汁の石灰添加による清澄効果を検討した.
甘蔗汁を所定のpHに10°Cで石灰添加により調整し,それぞれの甘蔗汁を, PM-30膜を使用して60および67°Cで限外濾過を行った結果, pH 8.1および8.5で著しく高い透過流束が得られた.これらの透過液は純糖率が高く,色度はpH 8.5で著しく増大したことから,清澄効果の最適条件はpH 8.1と結論した.
次に,甘蔗汁をpH 8.1に調整して限外濾過したとき,透過流束に及ぼす諸条件を検討した結果透過流束は,温度の上昇,撹拌速度および圧力の増大に伴って著しく増大する結果を得た.
さらに,甘蔗汁のpH調整を10, 30および85°Cで行い, 80°Cで限外濾過を行った結果,それぞれpH 8.1, 7.8および7.0で最大透過流束を示し,前二者の透過液のpHはそれぞれ7.2または7.3に低下した.また,透過液の残存石灰量は無処理の甘蔗汁よりも低い値を示した.さらに,リン酸含量も著しく減少し,石灰添加と限外濾過との併用によってほとんどのリン酸が不溶性のリン酸カルシウムとして除去されることがわかった.
製糖工程でも清澄汁のpHが7.2~7.3 (コールドライミング)および7.0 (ホットライミング)となるように石灰添加を行えば,純糖率の高い甘蔗汁が得られ,砂糖の収量が増大する可能性があることが示唆された.

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