日本農芸化学会誌
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食物繊維による加熱損傷カゼインの利用改善効果
武田 秀敏中島 昭桐山 修八
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1986 年 60 巻 11 号 p. 927-933

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抄録

加熱損傷カゼインの利用に及ぼす食物繊維の添加効果を検討した.食物繊維試料には,大根から調製した粒径1mm以下の乾燥粉末(RDF)を用いた.始めに,120°Cで3, 6, 12, 24時間蒸気加熱したカゼインにつき,溶解度,in vitroにおけるトリプシン消化を,次いで精製飼料のタンパク質源(25%)に用いてラットの成長とタンパク質消化率を調べた.
その結果,リン酸緩衝液(pH 7.6)に対する溶解度は,3時間加熱で28.7%に減少したが,以後加熱時間が長くなるにつれて高くなり,24時間加熱では65.8%であった.この現象は,酸可溶性の熱分解産物が増加したためと考えられた.
トリプシンによる消化速度は,加熱時間が長くなるにっれて未加熱の70から60%にまで著しく減少した.また,in vitroの酵素反応系にRDFを添加しても加熱カゼインの消化の遅延は,改善されなかった.
一方,この蒸気加熱カゼインを与えたラットの体重増加量およびタンパク質消化率は,未加熱に対して6時間加熱から低下し始めた.24時間加熱では,さらに有意に低下したほか,NPRも明らかに低下した.ところが,24時間蒸気加熱したカゼイン飼料にRDFを5%添加した場合,体重増加量は無添加群の200%に,またNPRは150%にまでおのおの有意に改善された.しかし,真のタンパク質消化率の低下は改善されなかった.
さらに,150°Cのオーブン内で24時間加熱したカゼインにつぎ,5% RDFあるいは0.5%リジンの添加効果を調べた結果,乾熱カゼインに対しては,いずれの添加でもラットの成長は改善されなかった.

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