本研究は,沖縄県宮古島市の一集落の悉皆調査結果をもとに,農家労働力が直面した労働市場の動態と,それが農業構造をいかに規定してきたかの解明を課題とした.調査地域の農家労働力は,切り売り労賃の析出される狭隘な労働市場に直面していたことが明らかとなった.そこには世代差も確認され,現在の青壮年層については,2000年代には全国的な労働市場からも,建設業を中心とする地域労働市場からも反発されていた.このため青壮年層は2000年代に,農業部面での上向展開を進めた.その結果,当該地域に上層・中間層の厚い農業構造が形成されると同時に,農地市場における競争的性格も強まっていった.