農業経済研究
Online ISSN : 2188-1057
Print ISSN : 0387-3234
ISSN-L : 0387-3234
研究動向
環境ストレス耐性の品種改良と遺伝資源保全の課題
齋藤 陽子
著者情報
ジャーナル フリー

2025 年 97 巻 1 号 p. 21-35

詳細
抄録

気候変動の農業への影響が危惧される中,適応策のひとつである環境ストレス耐性品種の育成・普及について,南アジアの冠水耐性稲を事例に,近年の研究動向を概説する.また,有用遺伝子の供給源となり得る在来種や多様性の保全について,農業の多様性保全サービス支払い(PACS)を中心に研究動向を説明する.環境ストレス耐性品種の普及は,限界地における貧困層の所得向上に貢献する一方,遺伝資源の多様性喪失につながる.多様性は,グローバル公共財として途上国・先進国を問わず,持続的な農業生産に不可欠と考えられることから,今後,遺伝的多様性を評価するとともに,人的活動が与える影響を分野横断的な研究によって調査・分析していくことが求められる.

著者関連情報
© 日本農業経済学会
前の記事 次の記事
feedback
Top