2019 年 2019 巻 128 号 p. 24-37
本研究は,農協の販売事業による産地の在り方について都市近郊型の広域合併農協の梨販売を事例に検討した。対象を埼玉県の南彩農協(JA南彩)の梨販売について聞き取り調査を中心として文献やデータをもとに研究を実施した。事例農協は,郡レベルの農協へ広域合併を行って20年が経過している。先行研究により農協共販の考え方を参照して梨産地における農協販売の現状と課題を明らかにし,今後の都市近郊(広域合併)農協の販売事業の在り方,継続性を見出すことを目的とした。
この研究で事例農協の明らかになった点として,1点目に農家数の減少・栽培面積の減少が大きな課題であり市場出荷よりも直売にシフトしていく考えが優位になっていること。2点目は各地域の合併前から続く販売事業の個性が明らかになり,それは地域的・歴史的経緯に裏付けされるものであったこと。3点目には農協共販は生産者や地域にとって有効な一面を持つことが挙げられた。