2021 年 2021 巻 132 号 p. 45-52
本資料は,農業再生協議会への悉皆調査から水田フル活用ビジョンの作成・公表の実態を,学術的に共有することを目的としている。主な結果は,次の3点である。まず,都道府県版水田フル活用ビジョンは全て作られており,地域版水田フル活用ビジョンは94%が作成されていた。2つ目に,水田フル活用ビジョンは都道府県や市町村のホームページで公表されることが多いが,全く公表されないこともある。3つ目に,水田フル活用ビジョンは,農業者の主体的な作付計画を促すための設計図でありながら,農業者の主体的な作付計画よりも後日に作成・公表される実態があり,水田フル活用ビジョンの役割が形骸化している点である。現行政策を支える水田フル活用ビジョンの実効性に関して,今後は実態分析から明らかにされる必要性がある。