2016 年 72 巻 2 号 p. I_769-I_774
2011年3月11日の東日本大震災により仙台海岸の海浜・河口において大きな地形変化が生じた.その後,早急な地形回復が見られた箇所もある.しかし,沿岸漂砂移動の連続性を考慮すれば,局所的な地形の回復は周辺の漂砂環境に対してsinkとして作用するため,これまで定量的に評価されてきた広域的な漂砂量分布・土砂収支などが変容していると推測される.そこで,名取川河口から仙台港に至る仙台海岸北部を対象として,津波発生後5年間の空中写真をもとに海浜の変形特性・土砂の増減量の変化などについて検討を行った.その結果,対象とした区間において津波前には4.5x105m3/年の土砂増加が見られたが,津波後3年間ではそれが1/10程度に減じ.さらに5年後の時点では負に転じていることが分かった.このように,津波後の地形回復過程において広域的な漂砂系が大きく変化していることが明らかになった.