抄録
強度行動障害のある方の中には,通常食べられないものを口にする「異食」が見られる人がいる.本研究は,異食の発生要因を把握し以後の発生予防方法を検討するため,A園で発生した強度行動障害のある方の異食事故の検証を行った.異食事故に携わった経験のある職員を対象としたヒアリング調査の結果,異食の発生要因は①不満・ストレス,②注意喚起・要求,③周期的な変化,④予測困難に分類された.対象者の所属寮では事前の情報収集や日常生活の観察を通し情報を集約した上で応用行動分析を用いて異食の要因を分析し,要因に応じた支援を行っていた.異食は身体的合併症のほか,生活の場の選択への影響もみられる緊急性の高い行動だが,異食の可能性のある物をすべて排除するのではなく,QOL向上の視点を持って発生要因に応じた支援を行うことが重要と考えられた.