主催: 看護薬理学カンファレンス
会議名: 看護薬理学カンファレンス 2022 in 福岡
回次: 1
開催地: 福岡
開催日: 2022/03/06
新型コロナウィルス感染症において、特に高齢、併存疾患の存在は、重症化・死亡リスクを高める。中でも認知症は、独立した危険因子であり、認知症の人が 感染した場合の死亡オッズ比は 1.8と報告されている。超高齢化社会にあるわが 国の認知症有病率は、65 歳以上で 15.0%、85 歳以上で 58.9%と推定されてい ることからも、認知症の人の感染対策の重要性は高い。
今回、本講座では新型コロナウィルス感染症流行下における認知症の人やそ の家族への影響について多角的に理解するための調査研究を行ってきた。全国 の医療介護施設(945 施設)・介護支援専門員(751 名)を対象とした質問票調 査では、認知症の人がケア提供様式の変化や感染予防のための外出自粛等に より、認知・身体機能の低下、行動・心理症状の悪化といった悪影響が生じて いたことが明らかとなり、その家族も介護負担感の増強や健康状態の悪化など がみられていた。また、これまで対面でのパーソンセンタードケアを基本としてき た認知症ケアを with コロナ時代においてどのように実践していくべきか示唆を 得るため、認知症ケアに携わるインフォーマル・フォーマルな介護者に対し、コ ロナ禍のケアについてインタビュー調査を行った。その結果、介護者らは認知症 の人へのケアにおいてどれを優先するべきか再検討しており、これに関する介護 者の認識が合致した場合には、関係性のポジティブな変化がみられていた。一 方、地域の感染状況が深刻化したり、立場の違いからケアの優先度の認識に相 違があった際、不安が強まったり、感染予防に対する認識のズレが生じていた。 さらにこれらの知見から、我々はコロナ禍における認知症をもつ高齢者とその 家族への支援は喫緊の課題と捉え、介入研究として、介護支援専門員とともに認知症症状や日常生活機能に応じた適切な感染予防、認知・身体機能悪化予防、 感染拡大時の備えに関する情報提供と実践支援を行ってきた。
本発表では、これらの研究結果を概観しながらwith コロナ時代における認知症ケアについて考察するとともに、研究展開における工夫をご紹介させて頂き たい。