せん妄は高齢入院患者に頻発する合併症であり、入院期間の延長、転倒、死亡率の増加など重大な影響を及ぼす。その発症要因の一つに薬剤があり、特にベンゾジ アゼピン(BZ)系睡眠薬はせん妄リスクが高く、適切な薬物療法を基盤とした多職種 による複合的なチームアプローチが求められる。
当院では 2020 年より看護師を中心に、医師、薬剤師、精神保健福祉士で構成され た高齢者ライフケアチーム(通称:エルケアチーム)を設立し、多職種の連携によりせ ん妄の一次予防を目的とした活動を展開してきた。今回は、院内のクリニカルパス改 訂と日常的な多職種によるチームアプローチでの看護師の実践を報告する。
1)クリニカルパス改訂
2020 年 1月~ 2023 年 3月にかけて、クリニカルパスを改訂し、不眠時指示からBZ 系薬剤を削除し、オレキシン受容体拮抗薬を優先使用とする指示へ変更した。その 結果、せん妄リスクの低い薬剤への切り替えが進み、病院全体のBZ 系薬剤使用量 が有意に減少した。
この取り組みでは、せん妄診療・ケアマニュアルの改訂、病棟勉強会の開催、定数 配置薬の見直しなど、看護師と薬剤師が連携してチームの中心となって活動を展開した。
2)日常的な多職種チームにおける看護師の実践
2022 年 4 月~ 2023 年 12月末の期間において、病棟看護師と密に協働した 25 症例 の看護記録から実践内容を抽出し、質的帰納的に検討した。その結果、904 コード・9カテゴリが抽出された。
不眠・不穏に対する薬物療法では院内マニュアルに従い、BZ 系薬剤などせん妄リ スク薬の投与削減を推進していた。さらに、マニュアルで対応が困難な事例ではチー ムの神経科・精神科、老年・高血圧内科の専門医師や薬剤師と連携して、個々の患 者の睡眠 - 覚醒リズムや意向に応じた処方計画、必要時積極的与薬の促進などを 行っていた。
また、チーム看護師は共感的態度で患者や家族と関わり、病棟看護師の困り事も 共有するなど、多岐に渡りサポートをしていた。そして、必要に応じて、リエゾンチーム などとの連携をコーディネートしていた。せん妄発症の促進因子に対しては、患者の 認知レベルに応じた働きかけを病棟看護師と協働して実施していた。
今後は、重症度や在院日数なども指標として多職種によるチームアプローチの効果 を評価していきたいと考えている。加えて、病棟看護師の考えも調査し、より質の高い チーム医療を実践していきたい。
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