看護薬理学カンファレンス
Online ISSN : 2435-8460
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シンポジウム 1 2040年への処方箋:拡大する看護師の役割とその未来
  • 鶴田 理恵
    セッションID: 2025.2_S1-1
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/02
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    緩和ケアチームは、2002 年に診療報酬において「緩和ケア診療加算」として評価され、2006 年には、がん診療連携拠点病院にチームの設置が義務づけられた。当院も、翌年にコンサルテーション型チームとして活動を開始した。専従看護師が 相談窓口となり、患者情報の包括的アセスメントに基づき必要な医療処置や薬剤処方、看護ケアを検討立案する。コアメンバー以外に、外科・内科・放射線科等 の医師をリンクとし、相談できる横のつながりを作り、医師やコメディカルの提案を統括し、即時提案できる仕組みを整えていった。しかし、高度先進医療を掲げる 大学病院では「緩和ケア=終末期」というイメージが強く、医師のニーズは非常に少なかった。また、チーム医師は兼任のため看護師が依頼を受けて第 1コンタクト をとっていたので、当時は「麻薬の指示も出せない看護師の提案を信用することはできない」といった厳しい言葉を投げかけられることもあった。その後、緩和ケア に関する基本教育が医師を中心に推進され、多くの医療従事者が基本的な緩和ケアを習得するようになり、緩和ケアチームの専門性がより高く求められるように なった。

    専門性の高い緩和ケアチームの看護師は、包括的アセスメントに基づくケアの 指針を立てるため、病いと治療の先行きを見据えておく必要がある。役割としては、

    ①患者と家族等の人生や生活にかかわるQOL の観点から苦痛やニーズを推察・ 評 価し、患者の対処能力に応じた、価値観を尊重したケアを提供する。②患者と家族等の意向に沿った治療や療養生活を実現できるよう、病いの経過を見通し、患者と家族等の価値観を尊重・意向を代弁しながら意思決定支援を促進する。③主治医や病棟・外来看護師、他の医療チームの協働や連携を図り、患者と家族等の意向に沿った緩和ケアが早期から円滑に切れ目なく提供されるように調整す る。等があげられる。

    以前アメリカで、麻薬の処方権をもつNurse Practitione(r NP)が、地域で開業し痛みのマネジメントをすることで、患者・家族の日常の中での安寧を保証してい ると教わった。処方や検査指示の権限により、地域との連携を円滑にしていた。日 本ではNP は国家資格ではなく日本 NP 教育大学院協議会の認定資格として設け られており、海外のように看護師独自の判断で診察や処方を行うことはできない が、将来NP が活躍する看護につなぐために、今、私自身が現在のチーム医療の 中での看護の役割を築き、繋ぐ役割を担わなければならない。

  • 眞鍋 芳恵
    セッションID: 2025.2_S1-2
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/02
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    せん妄は高齢入院患者に頻発する合併症であり、入院期間の延長、転倒、死亡率の増加など重大な影響を及ぼす。その発症要因の一つに薬剤があり、特にベンゾジ アゼピン(BZ)系睡眠薬はせん妄リスクが高く、適切な薬物療法を基盤とした多職種 による複合的なチームアプローチが求められる。

    当院では 2020 年より看護師を中心に、医師、薬剤師、精神保健福祉士で構成され た高齢者ライフケアチーム(通称:エルケアチーム)を設立し、多職種の連携によりせ ん妄の一次予防を目的とした活動を展開してきた。今回は、院内のクリニカルパス改 訂と日常的な多職種によるチームアプローチでの看護師の実践を報告する。

    1)クリニカルパス改訂

    2020 年 1月~ 2023 年 3月にかけて、クリニカルパスを改訂し、不眠時指示からBZ 系薬剤を削除し、オレキシン受容体拮抗薬を優先使用とする指示へ変更した。その 結果、せん妄リスクの低い薬剤への切り替えが進み、病院全体のBZ 系薬剤使用量 が有意に減少した。

    この取り組みでは、せん妄診療・ケアマニュアルの改訂、病棟勉強会の開催、定数 配置薬の見直しなど、看護師と薬剤師が連携してチームの中心となって活動を展開した。

    2)日常的な多職種チームにおける看護師の実践

    2022 年 4 月~ 2023 年 12月末の期間において、病棟看護師と密に協働した 25 症例 の看護記録から実践内容を抽出し、質的帰納的に検討した。その結果、904 コード・9カテゴリが抽出された。

    不眠・不穏に対する薬物療法では院内マニュアルに従い、BZ 系薬剤などせん妄リ スク薬の投与削減を推進していた。さらに、マニュアルで対応が困難な事例ではチー ムの神経科・精神科、老年・高血圧内科の専門医師や薬剤師と連携して、個々の患 者の睡眠 - 覚醒リズムや意向に応じた処方計画、必要時積極的与薬の促進などを 行っていた。

    また、チーム看護師は共感的態度で患者や家族と関わり、病棟看護師の困り事も 共有するなど、多岐に渡りサポートをしていた。そして、必要に応じて、リエゾンチーム などとの連携をコーディネートしていた。せん妄発症の促進因子に対しては、患者の 認知レベルに応じた働きかけを病棟看護師と協働して実施していた。

    今後は、重症度や在院日数なども指標として多職種によるチームアプローチの効果 を評価していきたいと考えている。加えて、病棟看護師の考えも調査し、より質の高い チーム医療を実践していきたい。

  • 阿部 美佐子
    セッションID: 2025.2_S1-3
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/02
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    特定行為に係る看護師の研修制度(以下、特定行為研修制度)は、看護師が医師の指示に基づいて特定の医療行為を自らの判断で行うことを可能にするための 研修制度である。看護師が医師の指示に基づき自らの判断で行うことのできる医 療行為は、38 行為に特定され、特定行為と呼ばれている。特定行為のうち、栄養 及び水分管理に係る薬剤投与関連(以下、栄養水分管理薬剤投与関連)という区 分には、「持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整」、「脱水症状に対する輸 液による補正」が含まれる。

    特定行為研修制度は、今年で開始から10 年を迎え、特定行為研修修了者は13,877 名となった(令和7年9月現在)。栄養水分管理薬剤投与関連の修了者は11,382 名であり、区分ごとに見て最も多い。また、特定行為研修修了者の就業人数(11,709 名)は、就業場所ごとに病院が 85.9%(10,067名)を占め、診療所、訪問看 護ステーションや介護保険施設では 12.2%(1,427 名)である(令和6年度衛生行 政報告例)。その一方で、栄養水分管理投与関連の実践について、地域在宅領域 での報告は散見されるが、病院においてはほとんど見られない。すなわち、全国 的に、特定行為「栄養水分管理薬剤投与関連」研修修了者の多数が病院で就業し ているが、そこで特定行為「栄養水分管理薬剤投与関連」を実践していない、と考 えられる。

    演者が所属する施設は、2017 年、厚生労働省から指定研修機関認定を受けて 特定行為研修を開始し、2019 年度より栄養水分管理薬剤投与関連を追加開講し た。現在、所属施設に在籍する看護師で、栄養水分管理薬剤投与関連を修了した 者は 32 名に上る。所属施設では毎年6名以上の特定行為研修修了者を育成する 計画があり、今後、水分栄養管理薬剤投与関連の修了者は更に増加することが見 込まれる。

    演者は、所属施設の特定行為研修を開設年度に修了し、自身は「栄養水分管理 薬剤投与関連」を修了していないが研修責任者として修了者による特定行為「栄 養水分管理薬剤投与関連」の活用を探ってきた。しかし、未だ実現に至っていない。

    所属施設における特定行為「栄養水分管理薬剤投与関連」をめぐる状況から、 急性期病院における活用に向け課題を明らかにし、留意すべき点や、何をどのよう に整える必要があるかを検討したい。

  • 谷渡 政隆
    セッションID: 2025.2_S1-4
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/02
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    クリティカルケア領域では、循環動態のわずかな変化が生命予後に直結する。そのため、迅速で安全、そして根拠に基づいた対応が求められる。特に、カテコ ラミンや降圧薬、電解質輸液、利尿薬などの投与量調整は、重症患者の循環を 維持するうえで非常に重要である。看護師特定行為制度で定められた循環動態 に係る薬剤投与関連の投与量調整は、医師の包括的指示書のもとで、看護師が 病態や指標を踏まえて適切に判断する行為である。本発表では、この循環作動 薬調整における多職種連携の実際と課題を報告する。

    医師との連携では、治療初期段階における目標平均血圧や薬剤上限・下限 の共有、状態変化時の速やかな報告、実施後の振り返り体制を整える事が重 要である。薬剤師とは、各薬剤の濃度・安定性・配合可否の確認、持続薬注入 経路の統一、投与量のダブルチェックなど、安全使用に関する協働を行ってい る。臨床工学技士とは、VAD(補助人工心臓)、ECMO(体外式膜型人工肺)、 Impella、IABP(大動脈内バルーンパンピング)、CHDF(持続的血液濾過透析) 管理時の循環動態評価を共有し、モニタ情報の正確さを保っている。

    さらに理学療法士とは、重症患者や術後早期患者の離床において、心臓や呼 吸の負荷を考慮した離床計画の作成と実践を協働で行っている。特定行為看護 師は、離床前・中・後での循環動態変化を観察し、必要に応じて薬剤調整を行 うことで、安全かつ効果的な離床支援を担っている。これらの連携により、看護 師が判断に必要とする情報の正確さと速さを確保しながらケアに繋げている。

    今後の課題としては、特定行為看護師を中心とした教育体制の整備、実施内 容の共有、相談・報告のしやすい職場づくりを進めていく事である。また、一人 で判断しない文化を組織全体で育てていく事が特定行為を安全に継続していく ために重要であると考えられる。循環作動薬に関する特定行為においても、看 護師単独ではなく、多職種がそれぞれの専門性を活かして協力することで、安 全で迅速な対応が可能になる。こうした多職種連携の成果を見える形で示し、 看護師による循環動態管理の質を高めていくことが今後の課題である。

  • 今﨑 由起子
    セッションID: 2025.2_S1-5
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/02
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    2040 年を見据えた医療においては、高齢化による医療ニーズの増加、医療従事者の不足、そして地域・世代を超えた医療連携体制の構築が喫緊の課題とさ れている。厚生労働省はその解決策として、地域医療構想の推進、医療 DXの 活用、働き方改革を掲げており、医療の標準化と効率化が進む中、現場では柔 軟な判断力と自律的な対応が求められる時代へと移行している。

    このような変化の中で、看護師には、単なるマニュアル遵守者ではなく、膨大 な情報の中から必要な情報を的確に選び取り、進化する医療システムを活用して、 患者一人一人に適した医療を提供する力が求められている。そして医療安全管 理者としての看護師は、医師・薬剤師・臨床工学技士など多職種と協働しながら、 患者・家族のみならず各職種の特性を理解し、チーム医療において調整と連携 を促進する役割を担っている。

    演者が所属する医療の質・安全管理部では、「患者安全の文化を自律的に実 践できる職員を育てる」ことを理念に掲げ、医療安全の制度整備とともに、安全 に資する改善活動を推進している。インシデントを防ぐためのマニュアル遵守は 重要であるが、それだけに依存すると有事の際に柔軟な判断ができなくなる恐 れがある。そこで当部では、研修で他職種のグループを作りノンテクニカルスキ ルの教育や Good Job 事例の共有を通じて、職員の自律性を育む取り組みを行っ ている。

    本シンポジウムでは、急速に進化する医療システムに対応するために、組織全 体がチームとして成長し、患者安全を目指す中で、看護師が医療安全管理者と して果たすべき役割について考察する。

  • 赤坂 彩
    セッションID: 2025.2_S1-6
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/02
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    私は、大阪大学医学部附属病院の集中治療部で3年間の看護師経験を経て、病院内の異動に伴い治験コーディネーター(以下 CRCと略す)としての道を歩み始 めた。新たな治療法の確立に携わることは医療の質向上に貢献するのではないか、 との思いから CRC の道を選んだが、実際に業務に携わる中で、看護師とは異なる 視点やスキルが求められることに気づいた。

    CRC は、医療機関において被験者(治験に参加する患者のこと)と医師、製薬 会社、治験関連スタッフの橋渡し役として、治験の円滑な進行と被験者の安全を 確保する役割を担う。その中で、看護師として培ってきた病状を把握し観察する 力やコミュニケーション能力は大いに役立った。一方で、治験特有の倫理的配慮、 GCP(治験実施の基準)や関連法規の理解、治験に関する公文書を作成する能力、 スケジュール調整力など、看護師時代にはあまり経験のなかったスキルを新たに学 ぶ必要があった。

    特に印象深かったのは、治験特有の倫理的配慮を実践する場面で、被験者に 対応する際、「中立的立場」を保つことの難しさである。看護師としては、患者に寄 り添い安心を提供することが重要であったが、CRCとしては患者に寄り添いつつ 治験実施計画書の遵守を前提に、被験者に対して公平かつ治験が正しく理解され るよう説明する必要がある。治験薬の投与に際しては、試験的な側面と治療的な 側面があること、薬剤等への正しい知識と理解のもと、患者が自ら意思決定でき るよう支援する必要がある。CRCには患者に寄り添う姿勢と治験そのものへの適 正な理解を促し、計画に沿って適切に実施することの 2 つを両立しながら対応する 役割が求められる。そのバランスを取る中で、「患者を支えること」と「治験参加や 継続など患者が重要な意思決定を行う際、患者自らの選択が最もを尊重され、結 果に対し中立であること」の違いを学び、看護職が CRC の役割を担う新たな意味 を見出すことができた。また、被験者を取り巻くチーム医療の中で、看護師が CRC として関わる意義についても深く考えるようになった。

    医療者間の橋渡しや患者の意思決定での支援において、看護師として培った知 識や技術が多くの場面で活かされていると感じる。今後も、患者のもとにいち早く 創薬が届けられ健康が守られること、医療の発展にも貢献できるよう、CRCとし ての新たな知見を重ねながら看護師としてのキャリアに繋いでいきたい。

看護薬理学教育セミナー1
  • 西原 茂樹
    セッションID: 2025.2_ES1
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/02
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    看護職は薬物療法の現場で、投与管理、患者への説明、副作用の観察など、医療安全に直結する重要な役割を担っています。しかし、薬理学の知識が不十分 な場合、薬物関連のインシデントや患者への不利益につながる可能性があります。 本講演では、看護職が日常業務で薬理学をどのように活用できるかを、具体的な 事例を交えながら解説します。

    まず、薬理学の基礎である薬物動態(ADME:吸収・分布・代謝・排泄)について、 看護実践に結びつける視点で整理します。薬物の吸収は投与経路によって異なり、 分布は血漿タンパク結合率や組織特性に影響されます。代謝においてはCYP 酵 素による相互作用が臨床上問題となることがあります。排泄は腎機能に左右され、 腎障害患者では薬物半減期が延長し、投与量調整が必要となる場合もあります。

    次に、臨床で頻用される薬剤群のうち、ハイリスク薬を中心に取り上げます。循 環器系薬では降圧薬の分類と特徴、中枢神経系薬では、睡眠薬や抗不安薬によ る高齢者の転倒リスク、抗うつ薬・抗精神病薬とせん妄の関係を示します。鎮痛 薬では、NSAIDsによる胃腸障害や腎障害、オピオイドの呼吸抑制と便秘対策を 具体的に説明します。さらに、抗菌薬の適正使用と腎機能に応じた投与調整、抗 がん薬の副作用管理など、看護職が押さえるべきポイントを整理します。

    薬物療法におけるリスク管理の観点から、添付文書やガイドラインの活用方法 について解説し、看護職の皆さまが現場で安全性を確保するために必要な情報を お伝えします。

    本講演を通じて、看護職が薬理学的視点を持ち、患者の状態に応じた薬物療 法の理解と実践を深めることで、より安全で質の高い看護の提供につながること を期待しています。

シンポジウム2 未来につなぐプレコンセプションケア:多職種で考える新たなかたち
  • 白石 三恵
    セッションID: 2025.2_S2-1
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/02
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    「プレコンセプションケア(preconception care)」は、将来の妊娠や出産に備えて心身の健康を整えるための包括的支援であり、疾病予防や健康増進の観点 からも重要な概念です。現在、産婦人科のみならず、看護、栄養、薬学など多様 な専門職の間で注目が高まっています。しかし、その目的や意義が理解されつつ ある一方で、実際に「いつ・どのような方法で・誰が」支援を行うのかについては、 現場での共通理解や実践の具体化が十分とはいえません。

    プレコンセプションケアの対象は、すべての妊娠可能な女性およびカップルで す。対象者は広範である一方、医療機関を受診していない健康な層に対して医 療者が直接関与する機会は限られています。そのため、医療者がどのように関わ ることができるのか、また限られた接点をどのように有効に活用していくかを検 討することが喫緊の課題です。

    プレコンセプションケアの推進には、多職種による協働が不可欠です。医師に よる医学的評価やリスク管理に加え、助産師・看護師による生活支援や心理的 サポート、栄養士による食生活改善の提案、薬剤師による服薬指導など、各専 門職が専門性を発揮しながら連携する体制の構築が求められています。しかし 現状では、こうした多職種連携の具体的な実践モデルや役割分担の在り方が十 分に共有されていないのが実情です。

    本シンポジウムでは、まず私からプレコンセプションケアの現状と課題を概説 し、その後、医師、管理栄養士、薬剤師など、各分野で実践を重ねておられる 先生方に、それぞれの立場からの取り組みや課題、そして連携への期待につい てご報告いただきます。これらの実践知を共有することにより、看護職を含めた 医療従事者がどのように協働し、妊娠前から女性とカップルの健康を支えてい けるのかを、多角的に考える機会としたいと考えています。

  • 藤田 太輔
    セッションID: 2025.2_S2-2
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/02
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    プレコンセプションケアの重要性と多職種連携のアプローチについて講演します。近年、晩婚化や高齢妊娠の増加に伴い、出生数は減少傾向にあり、計画外 妊娠も増加している。これにより、合併症妊娠やハイリスク妊娠の割合が増加 し、母児の予後改善が社会的課題となっている。

    プレコンセプションケアは、すべての妊娠可能な女性やカップルを対象とし、 妊娠前からの健康管理・リスク評価・治療的介入を行うことで、妊娠・出産時 のリスク低減と良好な妊娠転帰を目指す。とくに既往症や遺伝疾患のある女性、 小児癌既往、不妊症・不育症、前回妊娠時に合併症のあった女性が重要な対象 とされる。

    ケアのタイミングは青年期から成人期へと広範囲に及ぶ。具体的な介入項目 には、適切な年齢での妊活開始、BMI 管理(肥満・やせの改善)、妊娠前から の葉酸サプリメント摂取(胎児の神経管閉鎖障害予防)、アルコール・喫煙の制限、 ワクチン接種や歯周病・がん検診の推奨が含まれる。疾患合併妊娠においては、 高血圧、糖尿病、甲状腺疾患、膠原病、精神疾患などが母児双方に有害な影響 を及ぼすため、事前の疾患管理が重要となり、疾患活動性の低下が妊娠転帰の 改善に寄与する。

    周産期医療水準のさらなる向上には、妊娠前からの介入が不可欠であり、多 職種連携による個別最適化したケア、専門センターの役割強化、自治体政策推 進が求められる。今後も妊娠・出産を希望するすべての女性が安全にその機会 を持てるよう、プレコンセプションケア体制の普及・啓発を推進する。

  • 久藤 麻子
    セッションID: 2025.2_S2-3
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/02
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    本発表では、大阪府高槻市と協働で行っているプレコンセプションケア(以下:プレコン)の取り組みを紹介する。

    婚姻届を提出したカップルへ葉酸摂取を促すリーフレットの配布を2021年10月より開始した。この取り組みのきっかけは、高槻市の妊婦を対象とした母 子の口腔細菌叢と健康に関するコホート研究:Oral Microbiome Prospective Unicenter Cohort Study of Mother and Children (OMPU-CS)において、妊娠前から葉酸のサプリメントを摂取している妊婦は 20%に満たないことが明ら かになったことである。そのため、公衆衛生学実習配属学生と高槻市と共同で 葉酸摂取を促すリーフレットを作成した。また、高槻市のHPにもリーフレットを 掲載( https://www.city.takatsuki.osaka.jp/site/waiwai/101632.html )し、周知 を行っている。このリーフレットの配布効果を判定するため、高槻市に妊娠届を 提出する全妊婦を対象に質問票を配布している。

    また、2025 年 4 月より妊娠・出産を考えている方を対象にプレコンの動画の 配信を開始した。本動画はやせ、貧血、葉酸摂取についてのエビデンスを基に産 婦人科医と共同で作成した(本抄録 2 次元コードより視聴可能)。動画公開にあ わせて、婚姻届出時に配布中のリーフレットにプレコン動画の 2 次元バーコード を記載した。さらに、妊娠届を提出した妊婦へも貧血の改善の必要性や体重増 加不良のリスクを知ってもらうためリーフレットの配布を行い、さらに母子手帳ア プリへ動画視聴を促すプッシュ通知を高槻市が行っている。この動画視聴の効 果判定は生後 4 か月児健診時に行うこととした。

    今後は大学内の医師、管理栄養士、薬剤師、保健師等の専門職と協働でエビ デンスに基づくプレコンの動画を発信していく予定である。プレコンの情報提供 を若年女性やそのパートナへするには、具体的に妊娠を考えている方、健康教育 の一助等対象により必要とする情報が異なる現状・課題がある。そして情報を 届ける術にまだまだ検討の余地がある。

  • 富永 由美
    セッションID: 2025.2_S2-4
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/02
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    2013 年 6月に閣議決定された「日本再興戦略」において、予防・健康管理推進の新たな仕組みづくりとして、「薬局を地域に密着した健康情報の拠点として、 一般用医薬品等の適正使用に関する助言や健康相談、情報提供を行う等、セル フメディケーション推進のために薬局・薬剤師の活用を促進する」という方針が 示された。これを受け、2016 年の薬機法改正により「健康サポート薬局」の認 定制度が開始された。この制度では、患者が継続して利用できる、かかりつけ 薬局の機能に加え、国民の主体的な健康増進への取り組みを積極的に支援する 機能が薬局に求められている。しかしながら、2025 年 3月31日時点で全国の認 定数は 3,188 件に留まっており、国民からの認知度も低い状況が続いている。

    当薬局は、2017 年に健康サポート薬局としての要件を満たし、認定を受けた。 社内の会議室を改装し、地域住民向けの健康支援活動が可能なコミュニティス ペースを整備した。これまで、地域住民を対象に「糖尿病教室」「骨粗鬆症教室」「認知症サポーター養成講座」「高血圧に対する減塩教室」など、多様な健康 ミニセミナーを開催してきた。

    一方、国際的な保健戦略として注目される「プレコンセプションケア」は、世界 保健機関(WHO)により「受胎前に女性・カップルに対して医学的・行動的・社 会的介入を行うこと」と定義されている。我が国においても、子ども家庭庁より「プレコンセプションケア推進 5 か年計画」が策定されるなど、行政レベルで喫 緊の課題として認識されている。

    本シンポジウムでは、当薬局がこれまで実施してきた地域健康支援活動の中 から、特に若い世代に向けた健康支援活動(プレコンセプションケアに関する取 り組み)に焦点を当てる。具体的な健康ミニセミナーの内容、参加者からの反応 や感想等を紹介し、地域における薬局が情報発信を担う意義について考察する。

看護薬理学教育セミナー2
  • 元林 有紀
    セッションID: 2025.2_ES2
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/02
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    2025 年 8月、厚生労働省は、医師の処方箋不要、薬局での対面販売を前提として緊急避妊薬を販売することを了承した。本剤は「要指導医薬品」に指定され、 諸条件はあるが、準備が整い次第、市販薬として販売開始される見込みである。

    現在、日本において、緊急避妊薬の入手には処方箋が必要であるが、緊急避 妊薬の市販化が既に実現している国は多数ある。WHO(世界保健機関)は、意 図しない妊娠のリスクを抱えた全ての女性には緊急避妊にアクセスする権利が あり、緊急避妊の複数の方法は国内のあらゆる家族計画プログラムに常に含ま れなければならないとの旨を勧告しており、緊急避妊薬を必須医薬品と位置づ けている。さらに、WHO は、新型コロナウイルスパンデミック下、市販化の検討 を含め、緊急避妊へのアクセスの改善を世界各国へ提言している。

    日本では、今もなお望まない妊娠により女性が孤立した結果、虐待や乳児 遺棄となる事件は後を絶たない。これは、望まない妊娠をした場合の対応方法 が社会で十分に認知されていないことや、誰かに相談することへの心理的な負 担、緊急避妊薬の自己負担額が安価ではないこと等、様々な問題が関与してい る。日本における緊急避妊薬の普及は、未だ充分とは言えない。市販化に至るま での議論には、緊急避妊薬は特別な薬ではなく、多くの女性の健康を守るため に必要な薬であるため、より身近なものでなければならないとの意見がある一方、 これらの悪用や安易な使用を懸念する意見もある。今後、緊急避妊薬の市販化 により、入手方法の選択肢が増えるため、医療機関との連携や投薬時の情報提 供がより重要となる。

    今回、緊急避妊薬と併せて、経口避妊薬、経口中絶薬との違いをもお伝えす る。さらに、緊急避妊薬を投薬する際、医療従事者が提供すべき情報や注意点、 さらに緊急避妊薬市販化により生じ得る今後の課題についても共有する。

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