抄録
ラン科植物のアツモリソウ(Cypripedium macranthos var. speciosum )は、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」に登録されている植物のひとつである。野生個体の減少が著しい植物ではバイオテクノロジーの技術を用いた人工増殖が絶滅回避のための一手法として有効である。植物バイオテクノロジーの分野におけるラン科植物の増殖は、1922 年にKnudson が3 大栄養素と糖を用いた無菌培養法で発芽に成功したことから始まる。以来多くの研究が行われているが、アツモリソウは特に難しい。岩手県におけるアツモリソウの自生地はほとんどが消滅し、種は絶滅の危機にある。本研究は、地域の要請からはじまった。種の保存のための増殖および環境保全の資料とするため、無菌播種法を用いた種子発芽と苗の育成について検証した。