自然環境復元研究
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原著論文
八ヶ岳山地南東麓におけるニホンジカの不嗜好性樹種ミズナラの樹皮剥ぎと立地環境
川瀨 彩持田 幸良
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2016 年 8 巻 1 号 p. 23-31

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抄録

近年,日本各地でシカによる樹皮剥ぎが深刻化している。ニホンジカ(Cervus nippon )は嗜好性が高い樹種から剥皮するが,八ヶ岳山地南東麓において,不嗜好性樹種(ミズナラ)が冬期に局地的に激しい剥皮を受けている事例が確認された。不嗜好性樹種の剥皮は,シカが高密度化することによって発生すると考えられている。しかし,どのような場所,立地環境でシカが高密度化するのかについての検証は不十分である。そこで本研究では,不嗜好性樹種の剥皮と,積雪深や傾斜・斜面方位といった立地環境との関係を明らかにすることを目的とした。樹皮剥ぎの強度,ササの稈高測定,積雪深・傾斜・斜面方位の測定,シカの土地利用頻度に関する調査を行った。その結果,傾斜がやや急な南西斜面では,雪解けが早くシカの密度も高まりやすいことが判明した。日当たりがよく,雪解けにより林床のササ類も利用できる場所は,越冬地として好適であると考えられる。この立地環境によりシカの生息密度が高まり餌不足に陥った結果,不嗜好性樹種であるミズナラにまで剥皮がおよんだものと考えられた。

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© 2016 自然環境復元学会
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