日大医学雑誌
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総説
新たな感染症予防法の提唱
―白内障手術における術野の 0.25%ポビドンヨード術中洗浄による感染症予防―
島田 宏之
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2013 年 72 巻 1 号 p. 4-10

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抄録

健常人の結膜には常在細菌が 60~98%の例で検出される.眼瞼や眼表面をポビドンヨード消毒,手術中に術野を生理食塩水で物理的に洗浄するだけでは,結膜常在菌を 20%程度までしか軽減することしかできない.この眼表面の細菌が器具などを介して眼内に迷入するため,白内障手術では眼内炎を 1/2,000 件 (0.05%) で生じる.眼内炎は最も重篤な術後合併症であり,適切な治療を行っても視力予後が不良な例は少なくない.眼組織に安全で殺菌効果の高いポビドンヨード濃度は 0.05~0.5%とされている.これらの基礎データをもとに,我々は0.25%ポビドンヨードで眼手術の際に術野を繰り返し洗浄することで 「術野を一時的に無菌化」 させる方法を考案した.従来のような生理食塩水で術野の細菌を物理的に洗浄する効果と,ポビドンヨードの殺菌効果を加えた洗浄方法である.これまでに多数の眼内手術にこの消毒法を用いてきたが,眼内炎発症はなく,角膜障害などの眼合併症もない.この方法は,簡便かつ安価に行え,耐性菌誘発の心配もない感染症予防法である.

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© 2013 日本大学医学会
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