日大医学雑誌
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原著
抗血栓療法合併症例に対する呼吸器外科手術の検討
古市 基彦村松 高四万村 三恵西井 竜彦竹下 伸二石本 真一郎田中 洋子諸岡 宏明日暮 亮太塩野 元美
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2014 年 73 巻 6 号 p. 248-253

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抄録

2009 年1 月から2013 年8 月までの4 年8 ヶ月で当科で施行した全身麻酔手術症例は737 例で,術前から抗血栓療法を受けていたため,周術期にヘパリン置換を要したのは28 例(3.8%) であった.周術期管理としては内服の抗血栓療法薬は術前1 週間前に入院して中止し,未分画ヘパリン持続静注でAPTT を55 から70 秒程度にコントロールした.手術6 時間前にヘパリン静注を中止した.すべての症例で安全に手術を行え,術後第1 病日から内服薬を再開した.全体でのヘパリン置換群と対照群では手術時間や出血量に有意差はなかった.さらに肺悪性腫瘍の切除可能であった症例に限ると316 例中20 例(6.3%) が術前抗血栓療法を受け,ヘパリン置換群は手術時間の有意な延長は認めたが出血量や術後入院日数の有意な延長はみられなかった.抗血栓療法合併症例に対しては周術期にヘパリン置換を行っても通常の手術と同等の安全性を保って施行できると考えられた.

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© 2014 日本大学医学会
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