2015 年 74 巻 2 号 p. 50-56
臍帯血移植後の生着不全の機構解明のため,骨髄破壊的前処置の一つである放射線照射による骨髄ストローマの造血細胞維持能やホーミング関連因子SDF-1について検討した.マウスストローマ細胞(HESS-5) に10Gy 以上の放射線照射を行うと非照射細胞に比べ,SDF-1やJagged-1 のmRNA 発現が有意に低下し,同時に培養上清中のSDF-1 蛋白濃度も有意に低下した.一方,放射線照射したHESS-5 細胞とヒト臍帯血CD34+ 細胞との共培養実験では,20 Gy まで線量を増加させても臍帯血CD34+ 細胞の増幅・維持能は変化しなかった.10Gy 以上の照射を行ったHESS-5 細胞の培養上清は,臍帯血単核球の遊走能を有意に低下させた.マウスに10Gy 以上の放射線照射を行うと,マウス骨髄ストローマ分画の生細胞数は,非照射マウスに比べ約1/10 に減少し,SDF-1 の発現も低下していた.骨髄破壊的前処置に相当する線量の放射線照射は骨髄ストローマの細胞数やSDF-1 などの発現を減少させており,移植細胞の骨髄への生着を障害している可能性があることが明らかになった.