日大医学雑誌
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原著
統合失調症における探索眼球運動異常と精神症状との関係
大嵜 公一降籏 隆二今野 千聖鈴木 正泰高橋 栄小島 卓也内山 真
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2015 年 74 巻 6 号 p. 283-291

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抄録

統合失調症では,視覚認知に関わる探索眼球運動(exploratory eye movement: EEM) の異常が見られ,特に再認過程に見られる眼球運動パターンは疾患特異的であることが報告されている.今回,76 名の統合失調症患者に関し,陽性・陰性症状評価尺度を用いた詳細な精神症状評価を行い,EEM でみられる視覚認知機能異常がどのような精神症状と関連するか検討した.EEM の指標としては対象注視時の注視点の総移動距離,再認過程におけるEEM の広がりを表す反応的探索スコアを用い,この成績で対象を2 群に分け精神症状との関連を検討した.その結果,EEM での視覚性認知過程の障害は陽性・陰性症状評価尺度における陰性症状と関連していることが明らかになった.EEM は前頭葉において制御されていることが考えられることから,統合失調症の陰性症状と前頭葉の機能低下との関連を生理学的側面から実証したものと考えられた.

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© 2015 日本大学医学会
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