日大医学雑誌
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原著
ラット脳挫傷モデルにおけるcilostazol の効果
田原 潤一
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2016 年 75 巻 6 号 p. 268-274

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抄録

脳挫傷の治療では,血管内微小血栓による二次性脳損傷をいかに抑制するかが重要である.Cilostazol は抗血小板剤として脳梗塞の予防に広く用いられている.この抗血小板作用は脳挫傷における血管内微小血栓形成を抑制する効果を期待できるが,その反面,出血の増悪を起こすことが危惧される.この研究の目的は脳挫傷におけるcilostazol の効果を明らかにすることである.Controlled cortical impact (CCI) device を用いてラット脳挫傷モデルを作成した.CCI 単独群,aspirin 群,cilostazol 群の3 群に分けて,急性期での血管透過性亢進と血管内微小血栓形成,そして慢性期での脳挫傷体積を比較した.Aspirin 群では急性期の出血が著明であった.Evans blue 漏出体積を計測し血管透過性の亢進を評価すると,cilostazol 群ではCCI 単独群およびaspirin 群と比較し有意な減少を認めた(p<0.05).さらに慢性期における脳挫傷体積は,CCI 単独群と比べ,aspirin 群での脳挫傷欠損体積が有意に大きく,cilostazol 群では有意に小さかった (p<0.05).Cilostazol は急性期の血管内微小血栓の形成を軽減させた.一方でprogressive hemorrhage は軽度に抑えることができることから,脳挫傷での血管内皮保護効果や血管内皮機能改善効果の関与が示唆された.脳挫傷に対するcilostazol による治療の可能性が期待される.

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© 2016 日本大学医学会
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