日大医学雑誌
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原著
高齢者脳梗塞例の転帰予測:
脳萎縮を加味した新評価法
中村 秀
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2016 年 75 巻 6 号 p. 283-292

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抄録

高齢者の中大脳動脈(middle cerebral artery: MCA) 領域脳梗塞では,脳萎縮の存在が生命・機能予後に影響すると報告されている.そこで,我々は計測するに簡便な二次元(梗塞面積)の評価方法を提唱すると同時に,病前の脳萎縮の程度を加味できる新評価法とすることで,それらが生命・機能予後の予見可能性を評価した.2009 年から2011 年までに当院に入院した60 歳以上のMCA 領域梗塞患者86 例を解析した.生命予後の点では脳萎縮を加味した測定法が有用であった.一方,機能転帰予測には脳萎縮を加味する利点はなかった.これは,脳萎縮が高度であれば急性期生命予後を改善する一方で,機能予後を悪化させる逆説的な結果となった.このことから,脳萎縮を同時に考慮し,評価に加えられるこの方法が,高齢者の広範囲MCA 梗塞に対する治療選択の一助になると考えられた.

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© 2016 日本大学医学会
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