日大医学雑誌
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特  集 「心不全」
慢性期心不全の薬物療法
遠山 一人
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2020 年 79 巻 4 号 p. 209-215

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抄録

慢性心不全治療で大切なことは左室収縮能 (Ejection Fraction: EF) によって,治療反応性が異なるという点 である.日本循環器学会ガイドラインでは EF < 40%を 駆出率が低下した心不全 (Heart Failure with reduced EF: HFrEF),50%以上を駆出率が保たれた心不全 (HF with preserved EF: HFpEF),この間にある治療反応性が 40% 以上 50%未満を駆出率が軽度低下した心不全 (HF with mid-range EF: HFmrEF) と定義している.本邦の急性心 不全の疫学研究である ATTEND 試験2)などの大規模研 究からは心不全の約 3–5 割が HFrEF と考えられている. また,HFpEF においては HFrEF と比べ,高齢女性,糖 尿病や高血圧,心房細動のほかに COPD といった非心 血管疾患の併存が多い.JCARE-CARD 研究3)では,最 も多い背景として HFrEF では虚血性心疾患が 39.8%, HFpEF では高血圧が 44.3%と大きな違いを認め,予後 に関しては 1 年死亡率(全死亡)11%で同等とされる が,様々な大規模疫学研究により相違があり一定の報告 はない.HFrEF に対しては,予後改善効果をもってガ イドラインによる治療 (guideline-directed medical therapy: GDMT) が,推奨されており (Tables 1, 2),HFmrEF では, HFrEF において有効な治療薬がある程度の効果を示す症 例がある.しかし,HFpEF については現在も予後が確 立された治療がなく,来る心不全パンデミックの課題で ある.

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