日大医学雑誌
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ISSN-L : 0029-0424
原  著
頭部外傷後の細胞外液中 ATP とグルタミン酸の動向ならびに神経細胞死との関連
稲原 裕也大滝 遼梶原 遼神谷 光樹小林 真人熊川 貴大四條 克倫茂呂 修啓池田 俊勝前田 剛吉野 篤緒
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2023 年 82 巻 4 号 p. 227-236

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抄録

【背景】外傷後に細胞外液中にグルタミン酸とアデノシン三リン酸 (adenosine triphosphate: ATP) が放出されることが報告されている.しかし,外傷におけるグルタミン酸と ATP の放出や両物質の相互作用に明確な報告はなされていない.この相互作用を明らかにすることにより,二次性脳損傷の病態解明の一助となり得ると考えた.【方法】Stab wound injury モデルを作製し,非薬物投与群,アピレース群,テトロドトキシン群の 3 群に分けて,細胞外液中のグルタミン酸濃度と ATP 濃度を測定した.コントロール群とアピレース群ではモデル作製 3 日,7日,28 日後に脳検体を摘出した.モデル作製 3 日後の脳検体を用いて細胞死の程度を評価した.さらに,テトロドトキシンを用いて神経細胞活動や神経細胞興奮を抑制した際の ATP 放出を検討した.【結果】細胞外液中グルタミン酸値と ATP 値は,コントロール群と比較してアピレース群,テトロドトキシン群で有意に低い値を示した.細胞死の程度も同様の結果であった.glial fibrillary acidic protein,CD11b の発現量は,すべての時点においてコントロール群と比較してアピレース群で有意に低い値を示した.【結語】アピレース投与により ATP が抑制された状態では,グルタミン酸放出も抑制され,更に細胞死も抑制された.この相互作用の解明は,二次性脳損傷の改善につながる重要な知見であると考えられた.

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