抄録
アヤメ属は世界的にも観賞用として人気が高く,日本ではノハナショウブおよびカキツバタの野生種をもとに多品種が作出されてきたが,原種である野生種は近年,植生変化などによる群落の縮小,さらには絶滅が危ぶまれ,地方で刊行されるレッドリストおよびレッドデータブック等で,絶滅危惧種あるいは要注意種として扱われている.
ノハナショウブにおける保全に関する研究は,植生的見地のほか,発芽,成長特性,また,発芽から開花に至るまでの断片的な生活史および花粉媒介動物(ポリネーター)といった生物間相互作用についての研究例が比較的多く報告されている一方,カキツバタにおいては目にすることがほとんどない.
このため,本研究では,カキツバタの栽培実験および現地での観察を通して,発芽特性をはじめ,開花に至るまでの成長毎の形態的特徴,開花特性および訪花動物について観察を行い,新たな知見を得た.