抄録
医療技術の進歩や少子高齢化が進んでいることにより、病気に罹患した労働者(当事者)が就業継続を望むケースが増えてきている。研究の創成期においては、厚生労働科学研究「がんと就労」(高橋班)によりステークホルダーごとの支援ツールが作成され、社会的にも関心が高まり、さらに多くの研究班が立ち上がることになってきた。働き方改革実現会議においても重要なテーマとして取り上げられ、厚労省から「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」が公表されるまでになった。本人が起点となり復職することが想定されるが、そのためには合理的配慮の概念と、伝統的な安全配慮の概念をおさえておくことが重要である。障害という視点に立った時には医学モデルと社会モデルという対立するモデルがあるが、それらを統合した国際生活機能分類を参考に、心身機能・身体構造、活動、参加といった構成要素がそれぞれ相互的に作用していることを知ったうえで、医療と企業の連携をどのように深めていくかが重要な視点である。