抄録
昭和の時代には、病院を持ち、健診・検診センターを擁する企業は数多くあったが、周囲に病院や健診機関が設立された平成の時代になると、企業が自前で医療機関や健診機能を持つ意義が問われ、その数は激減した。しかし日立健康管理センタは一貫して存在し続けた。その結果、1996年当時の日立地区は従業員数5万人規模で年間の在職中死亡は80人を超えていたが、二十数年にわたる当センタの産業保健活動(予防医療)や地域の医療機関の医療技術発展(臨床医療)の成果として、現在では日立地区の従業員標準死亡比は0.37という結果に至った。日立地区従業員は全国と比べ、実に63%も死亡が低下した。当センタを中心に職域でのがん検診を含む健康診断と保健指導が実施されたことでデータの集約が可能となり、職域での大規模・長期のコホート研究を展開することができ、多くのエビデンスを出し、それをもとに健康施策へとつなげてきた結果であると自負している。本稿では、企業立健診・検診機関が果たしてきた軌跡を提示し、企業立の健診機関における産業保健への意義を示したい。