日本内分泌外科学会雑誌
Online ISSN : 2758-8785
Print ISSN : 2434-6535
症例報告
レンバチニブにより著明な腫瘍縮小を認めた甲状腺扁平上皮癌の1例
山田 亮坪井 光弘住友 弘幸広瀬 敏幸工藤 英治
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2023 年 40 巻 2 号 p. 110-115

詳細
抄録

症例は70代女性。呼吸困難のため当院救急外来を受診した。CT検査で甲状腺右葉腫瘤と気管の圧排狭窄所見を認め,気管内挿管を行った。穿刺吸引細胞診で甲状腺腫瘤は扁平上皮癌と診断された。気管切開を行った上で全身精査を行ったところ遠隔転移を認めなかったため,甲状腺全摘,右外側区域リンパ節郭清,気管合併切除を行った。術後3カ月に気管周囲に再発を認めレンバチニブによる治療を開始した。投与開始後,短期間で腫瘍の著明な縮小を得たが,右総頸動脈周囲の腫瘍の空洞化を認めたため投薬を中止した。その後,腫瘍の再増大に対して投薬を再開したが,前回投与同様に腫瘍の空洞化をきたし,最終的に気道内出血により死亡した。本症例ではレンバチニブにより急速な腫瘍の縮小を得たものの,病勢制御には至らず副作用マネジメントに難渋する結果となっており,進行扁平上皮癌へのレンバチニブ投与には適応を慎重に判断する必要があると考えられた。甲状腺扁平上皮癌に対するレンバチニブ投与の報告例は少なく,投与後の経過についても明らかになっていないことが多いため,貴重な臨床経験として今回報告する。

著者関連情報
© 2023 一般社団法人日本内分泌外科学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top