甲状腺腫瘍の新しいWHO分類第5版(WHO5版)では分類体系が抜本的に見直され,腫瘍細胞の起源と悪性度に基づく系統的分類に変更された。濾胞上皮細胞由来腫瘍(FDN)では,遺伝子変異パターンによる分類が進み,濾胞性腫瘍から濾胞型乳頭癌(PTC)をRAS系腫瘍,通常型PTCをBRAF系腫瘍とする枠組みが完成しつつある。分化型甲状腺癌に核分裂像・壊死を指標として“High-grade腫瘍”が定義されたが,ドライバー遺伝子変異にリスク遺伝子変異の加算された腫瘍であると理解され,早期の分子標的薬治療が考慮される。本稿では,WHO5版の理解と適切な病理診断のため,甲状腺癌の遺伝子異常を概説する。