日本内分泌外科学会雑誌
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特集2
「特集2.遺伝性腫瘍診療の現状と今後の課題」によせて
藤田 知之
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2023 年 40 巻 4 号 p. 236

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本特集のテーマは「遺伝性腫瘍診療の現状と今後の課題」とし,総論およびMEN1,MEN2,乳癌の各領域で遺伝性腫瘍診療の最先端にたたれている先生方にご執筆いただきました。

2015年のオバマ米国大統領による一般教書演説で,「precision medicine initiative(精密医療計画)」という言葉が用いられ,日本でも「がんゲノム医療・precision medicine」という言葉が頻繁に用いられるようになりました。2018年よりPARP阻害薬オラパリブ使用のためのコンパニオン診断に遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)の原因遺伝子であるBRCA1/2遺伝学的検査が承認されました。続いて標準治療がない固形癌患者または標準治療が終了となった固形癌患者に対し,がんゲノムプロファイリング検査(CGP)が保険収載されました。2020年4月より特定の遺伝子異常に基づいた予防的治療にも保険が認められ,全国どこでもがんゲノム医療が受けられる体制づくりが進められ,がんゲノム医療が本格的に日常診療で実行されるようになってきました。がんゲノム医療は遺伝子診療部門とがん治療部門が連携して治療することだけではなく,血縁者も含めたサーベイランスも必要です。多くの場合,発症リスクの高い個人や家族にとって重要な医学的問題となります。

遺伝性腫瘍に対する医療はがんゲノム医療を日常臨床に実装化した代表ともいえます。遺伝性腫瘍の診断と治療・管理のアプローチは大きく進歩していますが,まだ多くの課題が残っています。この特集では,内分泌外科領域で遭遇する遺伝性腫瘍診療の現状と課題について,専門家の意見や最新の研究成果を紹介しました。

患者への遺伝子検査の提供,遺伝子変異の意味の解釈,適切なカウンセリングの提供など,総合的なアプローチについて古庄知己先生に解説していただきました。また内分泌外科領域の遺伝性腫瘍の遺伝学的検査で保険収載となっている項目はMEN1,RET,BRCA1,BRCA2(2023年9月時点)があります。MEN1は治療戦略や予後予測,サーベイランスに関する情報はまだ限られており,治療の個別化と最適な管理に向けての研究が求められます。MEN1について副甲状腺の術後長期成績を大場崇旦先生に解説していただきました。RET病的バリアント陽性者の甲状腺髄様癌の浸透率は100%であり,遺伝性腫瘍の中でも予防的医療の有用性が高い疾患のひとつであるといえます。MEN2について顕性化前甲状腺手術を中心に木原実先生に解説していただきました。HBOCはBRCA1/2遺伝学的検査の保険収載以後,日々の診療内で適切で正確な情報を提供し,患者の自律的な意思決定により,治療法の選択やサーベイランスにつなげることが重要です。HBOCについて臨床現場での現状と工夫・課題を石川裕子先生に解説していただきました。

内分泌外科領域だけでなく,遺伝性腫瘍診療に携わる多くの先生方にとって,本特集が情報提供と議論の場となり,遺伝性腫瘍診療の向上に寄与できることを期待しています。最後に,ご多忙の中,本特集の執筆を快くお引き受けいただきました著者の先生方に心より御礼を申し上げます。

 
© 2023 一般社団法人日本内分泌外科学会

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