日本内分泌外科学会雑誌
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特集1
「特集1.甲状腺腫瘍診療ガイドライン2024」によせて
杉谷 巌
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2024 年 41 巻 2 号 p. 83

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「甲状腺腫瘍診療ガイドライン」は,2010年に初版が発行され,2018年に改訂版が公開された。その後も新たなエビデンスの蓄積があり,今回,改訂第3版として,2024年版を発行する運びとなった。本ガイドラインの目的は初版から変わらず,甲状腺腫瘍に悩む患者の健康アウトカムを高めることである。本改訂版もまた,エビデンスに基づく医療利用者と提供者の意思決定(shared decision making)を可能にすること,甲状腺腫瘍に対する診療を標準化することを目標としている。一方で,本領域においては,実臨床上の重要な事項であっても,高位のエビデンスが不足している部分も少なくない。現状のコンセンサスを踏まえて,実用的なガイドラインを目指した。なお,対象は基本的に成人患者とした。

本ガイドライン作成委員会は10名の委員で構成されたが,システマティックレビューチームとして49名の先生方にもご参加いただいた。皆様の絶大なご尽力に深く感謝申し上げたい。

今回の改訂作業には2021年10月に着手した。臨床上の重要な課題を疫学,甲状腺結節の診断・治療総論,組織型別診療方針(乳頭癌,濾胞性腫瘍,髄様癌,低分化癌,未分化癌),放射線ヨウ素内用療法,分化癌進行例の治療,甲状腺がんの薬物治療,甲状腺手術にともなう合併症と安全管理の領域に分け,32のclinical questionを設定し,網羅的文献検索,システマティックレビュー,エビデンスの吟味を行って推奨文を作成した。エビデンスの確実性は予め定めた基準により,4段階で評価した。推奨度の決定にあたっては,臨床的有用性の大きさなども踏まえて作成委員会で議論を尽くし,最終的に投票で決定した。

診療の全体的な流れに関してはアルゴリズムとして図示した。推奨の理解のために必要な疾患の背景知識やすでに確立した診療手順については「解説」で,最近の知見などエビデンスが十分でないが,臨床上有用と思われる情報については「コラム」で記載した。最後に,将来の課題を「Future Research Questions」として掲載した。今後のわが国における甲状腺がん研究の方向性を知るうえで,参考になることを願っている。

本特集では全11章のうち,とくに大きな改訂を行ったり,新たに章立てした項目について,作成委員から伊藤康弘先生,廣正智先生,森谷季吉先生,清田尚臣先生,小野田尚佳先生にそれぞれ,乳頭癌,放射性ヨウ素内用療法,分化癌進行例の治療,甲状腺がんの薬物療法,甲状腺手術にともなう合併症と安全管理について,要点を解説していただいた。

今後,本ガイドラインの普及によりその目的がどれだけ達成できたかについて,National Clinical Databaseなどを活用して客観的に評価することも重要である。ガイドラインの妥当性検証と(望むらくはわが国発の)さらなるエビデンス蓄積を踏まえた次の改訂がダイナミックに行われることが期待される。

 
© 2024 一般社団法人日本内分泌外科学会

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