2025 年 42 巻 1 号 p. 1
本特集のテーマは「甲状腺内視鏡手術 pitfallと私の工夫」とさせていただきました。
近年,消化器外科,呼吸器外科,産婦人科,泌尿器科の各領域では手術の大部分が内視鏡下に行われるようになりました。そのため,学会で手術動画を閲覧しあう研究会や学会が多く開催され,手術機器メーカーが管理する各サイトで各々の領域の術式の内視鏡手術の動画を視聴できるようになりました。各術者が色々と工夫し,内容として多彩ですが,優れた術式の工夫は他の術者に素早く真似され,全体として年々Brush Upされているように思います。一方で,甲状腺の内視鏡手術については保険適応となって以降もその普及は非常にゆっくりで,術式の改善も遅いように思います。その原因として,甲状腺内視鏡手術の動画(特に未編集動画)を視聴する手段が他領域と比較し圧倒的に少ないことが原因かと思います。甲状腺内視鏡手術の技術認定制度もはじまりましたので,この点につきましては学会の担当委員の今後の活動に期待したいと思います。
現在,本邦では甲状腺内視鏡手術は複数のアプローチ,術式で行われています。各流派ともそれぞれ歴史があり,工夫を重ねて今の術式に到達したものと察しますが,今後の甲状腺内視鏡手術の普及を考えますと,今一度それぞれの利点,欠点を洗い出し,他流派から良い点をお互いに学びとる姿勢が重要と思い,本企画を立案いたしました。今後の普及をという趣旨なので,今後10年は甲状腺内視鏡手術を引っ張っていってくれそうな次世代の先生方に執筆を依頼しました。平光高久先生にはVANS(Video Assisted Neck Surgery)原法とそれから工夫した術式について,三崎真理子先生にはVANS変法を行う立場から,斎藤慶幸先生には腋窩アプローチで送気法を行う立場から,南幸次先生には吊り上げ法(VANS)と送気法を使い分ける立場から執筆をお願いしました。動画でなく文面であることから,なかなか理解し難いところはあるかと思いますが,各々の利点,欠点を学び,その根底にあるフィロソフィーを学ぶことで,学会全体として今後の内視鏡手術の深化が期待できればと考えています。