理論と方法
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原著論文
「共有地のジレンマ」モデル再考
―海野モデルの再検討と一般モデルの構築―
神事 直人
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1997 年 12 巻 1 号 p. 15-30

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抄録
 「共有地のジレンマ」を定式化したモデルとして提唱された「海野の共有地のジレンマモデル」(Umino, 1989)について、三隅(1993a, b)はこのモデルが「共有地のジレンマ」モデルとしては不適切であることを論じた。これに対して、本稿では、海野のモデルには一部表現に不適切な部分かあることを指摘し、海野のモデルの土台となっているDawes(1975)のモデルにまで戻った上で、海野のモデルの表現を一部修正する作業を行った。その上で、基本的には海野のモデルが「共有地のジレンマ」を適確に表現していることをあらためて確認し、逆に三隅(1993a, b)の論証には誤りがあることを明らかにした。また、三隅(1993a)が「共有地のジレンマ」の一般モデルとして提唱した「保存=共通モデル」は、「共有地のジレンマ」の一般的定式化に失敗していることを論証した。これらの議論を踏まえた上で、海野のモデルを拡張したモデルを構築し、さらに、「共有地のジレンマ」を一般的に定式化したモデルの構築を試みた。そして、この一般モデルと比較することにより、従来の「共有地のジレンマ」モデルの特徴を明らかにし、それに加えて「保存」型と言われる社会的ジレンマの中での「共有地のジレンマ」の状況そのものの特徴について考察した。
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© 1997 数理社会学会
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