理論と方法
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研究ノート
代議制における投票のパラドックス
─オストロゴルスキー・パラドックスの成立可能性について─
与謝野 有紀
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1997 年 12 巻 1 号 p. 47-60

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抄録

 本研究の目的は、いわゆるOstrogorskiパラドックスの成立条件とこのパラドックスが生起する確率を求めることである。Ostrogorskiパラドックスは代議制に関わる投票のパラドックスであり、既存研究の中でこのパラドックス状況が生起する条件が検討されてきた。Rae and Daudtの定理はそのような研究によって得られた条件の一例であるが、この条件は現実的な場面でパラドックスが発生する可能性の有無を検討するには不十分なものであり、また、その識別力も必ずしも強いとはいえない。ここでは、投票結果に関する情報が得られている場合について、より識別力の強い条件を明らかにするとともに、どの程度このようなパラドックスが生じるのかについての確率を求めた。これらの分析から、主に以下の2点が明らかになった。第一は、ある党が100%の得票率で選ばれたとしても、Osrtogorskiパラドックスが生じる可能性を棄却できないことであり、また、第2は、パラドックスが生じる可能性が予想以上に高いことである。この点からも、住民投票の意義は簡単には否定できない。

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© 1997 数理社会学会
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