抄録
受賞論文では、ファラロー高坂モデル(FKモデル)の数理的展開を試みたが、このモデル展開をひとつの例として、社会学理論と数理的手法の関係性いついて考えてみたい。このモデルの内部的な問題を超えて、一般的にこの関係性を整理するにあたって、1975年にラザーズフェルドが日本の数理社会学者に向けた言葉、およびそれに対する西田春彦の注釈をその助けとしたい。ラザーズフェルドは、第一に数学に通暁すること、第二に広い関心をもつこと、第三に質的な数学を工夫することの必要性をあげているが、このいずれも、現在の数理社会学における理論と方法の関係について深い示唆を含んでいる。これらの点に着目して問題を整理したとき、方法の限界によって積極的に規定されてしまうことなく、現実との対比のなかで数理社会学的なモデル展開をすることの重要性が、自らのモデルとの関わりの中で再認識される。