理論と方法
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14 巻, 1 号
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特集 性別分業とジェンダーの計量分析
  • 木村 邦博, 石田 浩
    1999 年 14 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 1999年
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
  • ─結婚に至る階層結合パターン─
    白波瀬 佐和子
    1999 年 14 巻 1 号 p. 5-18
    発行日: 1999/03/31
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     本研究の主たる目的は、様々な社会的背景を持つ一組の男女が結婚に至る階層結合のパターンを検討することにある。社会的背景として出身階級と学歴に焦点をあてて、前者を属性的背景、後者を業績的背景とした。ここでの分析は大きく分けて2段階からなっており、(1)社会的背景と結婚に至る関係に着目し、未婚の割合を出身階級・学歴別に時系列的に検討し、(2)結婚した者のなかで、男女の社会的背景の結びつきがどのように変化していったのか検討した。
     まず、未婚の割合について、男性の未婚割合は出身階級と関連し、女性の場合は学歴との関係が強い傾向にあることは見いだせた。しかし、一貫した時系列的な変化及び明らかな男女未婚者間での出身階級別、学歴別ミスマッチのパターンは認められなかった。社会的背景の結合パターンについて、同類婚的結びつきが一貫して優勢で、特に高学歴者同士と低学歴者同士が結びつく同類婚が顕著であった。配偶者選択における教育の持つ意味は高く、教育が配偶者選択の幅を広めるというよりは、特に高学歴同士、低学歴同士での同類婚的結合を促す役割を持ち合わせていた。
  • Does Equalization in Wages Change the Sexual Division of Labor?
    田中 重人
    1999 年 14 巻 1 号 p. 19-34
    発行日: 1999/03/31
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
         This paper examines two versions of the rational household theory: The radical version implies sex equalization in wages changes the sexual division of labor, while the moderate version implies not. The latter is supported by findings from national representative surveys of Japan: Despite the narrowing of female/ male wage gap for younger age groups, women's continuous full-time employment did not rise; there has been a slight increase in husbands' housework time on weekdays, but this may be due to husbands' self-serving response bias.
  • ─就労とのかかわりに関する社会心理学的考察─
    鈴木 淳子
    1998 年 14 巻 1 号 p. 35-50
    発行日: 1999/03/31
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は、夫と妻を相互作用によって互いに相手の態度形成に影響を与える重要な他者としてとらえ、そのジェンダー関係を明らかにするために、性役割態度における平等志向性と就労行動、就労意識(理想のライフコース)、デモグラフィック変数との関係を検討することである。分析データは163組326名の大卒(大学院卒も含む)夫婦の回答である。まず、主な変数ごとに夫婦それぞれの回答を比較し、相関を求め、最後に偏相関分析を用いて夫婦間の性役割態度における平等志向性の関係に影響を与える変数を求めた。
     分析の結果判明したことは以下の通りである。性役割態度における平等志向性は、(1)妻の方が夫より有意に高い;(2)妻がフルタイム就労の夫婦の場合、妻が無職およびパートタイムの夫婦より夫も妻も有意に高い;(3)妻の就労行動(就労状況、就労形態、就労継続期間)との関係が強い;(4)夫の就労行動と特に関係はない;(5)夫の場合、夫自身より妻の就労行動(就労状況、就労形態)との関係が強い;(6)妻の場合、子供の数や子供の年齢と特に関係はない。妻の理想のライフコース選択および夫が妻に期待するライフコース選択については、妻がフルタイムの夫婦の選択がもっともよく一致し、夫婦ともに仕事継続志向である。偏相関分析の結果から、夫婦間の性役割態度における平等志向性レベルの関係に影響力をもつ変数は、妻の理想のライフコース、夫が妻に期待するライフコース、妻の就労形態である。この結果は、高学歴夫婦の性役割態度の関係においては、デモグラフィック変数より社会心理学的変数の影響力の方が大きいことを示唆している。今後のジェンダー関係の研究では、男女を別々に分析するのではなく、互いに相互作用のある重要な他者としてその関係性を重視し、意識や態度などの心理学的変数を使用することによって、より精緻化する必要があるものと思われる。
  • ─平成7(1995)年度国民生活基礎調査を用いて─
    稲葉 昭英
    1999 年 14 巻 1 号 p. 51-64
    発行日: 1999/03/31
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     人が生涯にわたって経験するストレスには大きな性差が見られる。本研究は平成7年度国民生活基礎調査の集計結果を用いて女性に一貫してストレス経験率が高いことを示し、このパターンを説明するいくつかの仮説を検討する。最終的には、自分、家族、家族以外の他者、いずれに成立する出来事に対しても、女性の方がほぼ一貫してストレス経験が高いことが示される。これは女性が他者に対するケアのみではなく、自分に対するケアもより多く行うというケアの性別非対称的構造を想定することで説明が可能となる。最後に、女性によるケアの提供という視点から性別役割分業を捉える可能性が議論される。
学会賞受賞講演
  • ─社会学理論と数理的手法の関係性の視点から─
    与謝野 有紀
    1999 年 14 巻 1 号 p. 65-73
    発行日: 1999/03/31
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     受賞論文では、ファラロー高坂モデル(FKモデル)の数理的展開を試みたが、このモデル展開をひとつの例として、社会学理論と数理的手法の関係性いついて考えてみたい。このモデルの内部的な問題を超えて、一般的にこの関係性を整理するにあたって、1975年にラザーズフェルドが日本の数理社会学者に向けた言葉、およびそれに対する西田春彦の注釈をその助けとしたい。ラザーズフェルドは、第一に数学に通暁すること、第二に広い関心をもつこと、第三に質的な数学を工夫することの必要性をあげているが、このいずれも、現在の数理社会学における理論と方法の関係について深い示唆を含んでいる。これらの点に着目して問題を整理したとき、方法の限界によって積極的に規定されてしまうことなく、現実との対比のなかで数理社会学的なモデル展開をすることの重要性が、自らのモデルとの関わりの中で再認識される。
原著論文
  • ─偏ネット・モデルによる分析─
    木村 泰之, 山口 和範
    1999 年 14 巻 1 号 p. 75-89
    発行日: 1999/03/31
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     本研究では、紐帯の理論に基づき、電子会議室におけるコミュニケーション・ネットワークを測定した。測定で得られたデータを、強い紐帯に基づくネットワークと弱い紐帯に基づくネットワークの2つに分割し、それぞれの結合度を算出した。その結果、電子会議室のコミュニケーションでは、現実の社会とは異なり、強い紐帯に基づくネットワークの結合度が、弱い紐帯に基づくネットワークの結合度よりも高い、という知見が得られた。そして偏ネット・モデルに基づくシミュレーションを実施し、そのパラメータを解釈することによって、電子会議室のコミュニケーション構造の性質に関する考察を行った。シミュレーションの結果、電子会議室のコミュニケーションでは、3つ組閉包が形成されにくいこと、また返報性という性質によって、強い紐帯に基づくネットワークの結合度が高くなることが明らかになった。
  • 浜田 宏
    1999 年 14 巻 1 号 p. 91-104
    発行日: 1999/03/31
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     本稿のテーマは、準拠集団と相対的剥奪である。歴史的個体の説明に限定されない一般理論としての相対的剥奪の基本メカニズムは、既にBoudon(1982)とKosaka(1986)によって定式化され、モデルからは報奨密度の増加に伴う相対的剥奪率の上昇には臨界点が存在する、等のインプリケーションが導出された。本稿では、相対的剥奪モデルと既存の準拠集団論との接合は充分でなかったことを示し、Stouffer et al.(1949a)、Merton(1957=1961)などの帰納的研究の知見を基にモデルを修正し、相対的剥奪と準拠集団という概念の理論的な統合を図る。修正モデルでは、各行為者は属性の共有に基づいて準拠集団を選択する、という仮説に基づいた場合の相対的剥奪率の変化を分析した。その結果、選択の際に用いた属性の組み合わせによっては、利益率R›1のときに剥奪の臨界点が二つになること、剥奪率の最大値が一定であること、等のインプリケーションが導出された。
  • 野辺 政雄
    1999 年 14 巻 1 号 p. 105-123
    発行日: 1999/03/31
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     本稿では、岡山市に住む60歳以上80歳未満の女性の調査データを分析して、高齢女性の主観的幸福感(モラールと生活満足度)を規定する要因を探究した。その分析で得られた知見は、次の4点である。(1)健康であるほど、同居家族関係や友人関係が多いほど、高齢女性は高い主観的幸福感を持っていた。要因の中でも、健康度は、格段に大きな影響を主観的幸福感に与えていた。(2)親密な人々が同居家族としていつでも近くにいることが安心感を与えるから、高齢女性の主観的幸福感を高めると考えられる。(3)「宗教集団」と「趣味の会・スポーツ団体」といった自主加入型集団に加入している高齢女性は主観的幸福感が高かった。それらの集団に加入し、活動することで、友人関係が増えるから、友人関係を多く組織することが高齢女性の主観的幸福感を高揚させると考えられる。(4)配偶者のいる高齢女性よりも、配偶者のいる高齢女性で、家族外の社会関係は主観的幸福感に影響を及ぼすということはなかった。また、配偶者がいると高齢女性の主観的幸福感が低くなるということはなかった。
  • ─繰り返し評価形成モデル─
    小林 盾
    1999 年 14 巻 1 号 p. 125-140
    発行日: 1999/03/31
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     この論文の目的は、他者の効用関数に配慮して評価を形成する時に、全個人の効用関数から評価関数を構成する仕方が多様であっても、評価形成を繰り返せば、最終的な評価関数が全員一致する場合があることを示すことになる。ハルサーニは、全員が功利主義に基づいて等しい重み付けで配慮し合うならば、全員一致した評価関数に至ることを示した。そこでこの論文では、配慮の仕方が多様な場合にも、全員一致するかどうかを検討する。個人が独自の評価原理に基づいて、全員の1期前の評価値を凸結合して今期の評価値と見なすことを同時に繰り返すと仮定して、2つの結果が得られた。(1)互いに少しずつでも配慮し合う限りは、初期の効用関数に関わらず全ての選択肢に関して、最終的な評価関数が必ず全員一致する。(2)誰か1人に集中して配慮する人がいても、残りの人が全員に配慮するならば、やはり全員一致する。この結果から、対照的と考えられてきたマクシミン原理と利己主義原理が同じ性質を持つこと、対立すると捉えられてきた功利主義原理とマクシミン原理が共存できることが、明らかになった。
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