抄録
本稿では、他者との相互作用プロセスの中で、社会に対する不公平感がどのように生じるのかについて数理モデルを提示した。社会が判断対象となる場合、行為者はまず社会に存在する分配システムについてイメージを形成し、そのイメージの中で社会の公平さを評価する。社会システムについてのイメージ形成に関しては、既にFararo(1973)による階層構造のイメージ形成モデルがある。しかし分配システムのイメージ形成は扱われていない。公正判断に関しては、status value formulationを始めとする先行研究が存在する。だがこれらはミクロな公正判断を主な対象とし、input-outcomeの公正交換率が相互作用プロセスを通して形成されるという視点はない。そこでモデルではこれら先行研究を発展・結合させ、次のように仮定した。すなわち、分配システムについてのイメージは、input-outcomeシステム内の行為者の位置と、彼が最初に出会った他者とに依存して形成される。行為者は、このイメージをもとに公正交換率の決定と、評価対象の選択を行い分配システム全体に対する評価を行う。分配システム内のどのような行為者が大きな不公平を感じるかついていくつかのインプリケーションが得られた。