2005 年 20 巻 1 号 p. 109-125
浜田・石田 (2003) は, J. ローマーの「機会平等の原則」というアイデアに基づき, 性別や親の地位などの機会の差を仮想的に調整した社会のジニ係数を分析する方法を定式化した. しかしながら, 浜田・石田 (2003) では, ローマー・モデルと仮想的機会調整分析法の仮定の違いが明確に規定されておらず, 機会不平等調整前後のジニ係数の差が統計的に有意であるかどうかも考慮されていなかった.
そこで本稿では, ローマーの規範的モデルと仮想的機会調整分析法の違いを明確化しつつ, ブートストラップ法を応用することにより, 機会調整前後のジニ係数の有意差検定を行う手法を提唱する. さらに, 機会変数が比率尺度である場合の分割数に関する問題についても言及し, 分析法の理論的性質を明らかにする. また分析例としてSSMデータを用い, 不動産相続額を機会変数とみなして, 所有不動産額と世帯所得という結果の配分への影響を検証する.