理論と方法
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翻訳論文
強い紐帯の合理的な弱さ
合理的エージェントからなる緊密な集団における連帯の失敗
フラハ アンドレアス山本 英弘
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2006 年 21 巻 1 号 p. 131-156

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抄録

近年の研究 (Flache 1996; Flache and Macy 1996)では「強い紐帯の弱さ」が指摘されている。すなわち、緊密な社会的ネットワークは集団連帯を維持するのではなく、むしろ弱めてしまうのである。シミュレーションの結果からは、適応的な行為者は共有財 (common good) を犠牲にしてでも紐帯を大切にするために、共有財をめぐっての集団での作業の交換よりも、相手に対する承認をめぐっての2者間での交換において、より早く協力を学習することが明らかとなっている。このような結果には適応的学習という認知の単純さ (cognitive simplicity) が重要な条件だと考えられる。しかし本稿では、ゲーム理論を援用して、強い紐帯の弱さが認知の単純さの問題ではないことを示し、緊密な集団における連帯の失敗の新しい条件を明らかにする。作業が不確実だと、共有財の生産における合理的な協力が次第に非効率的になる。したがって、合理的行為者は同僚からの承認に依存するほど、社会的紐帯を維持するために共有財の生産から得られる利益を犠牲にする。

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© 2006 数理社会学会
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