理論と方法
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原著論文
閉鎖的関係および開放的関係の相互作用による社会的効率性の向上
藤山 英樹
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2007 年 22 巻 1 号 p. 17-30

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抄録

本稿では,利得が確率変数となっている囚人のジレンマ状況での,「開放的関係」と「閉鎖的関係」の相互補完的なメカニズムを明らかにする.「開放的関係」では,個々のプレイヤーはランダムにマッチングされ,1回限りのゲームを繰り返すことになる.「閉鎖的関係」では,ゲームの相手は固定され,協力行動が繰り返されると仮定する.結論としては,どちらか一方の関係しかないときよりも,両関係が存在し,相互間でダイナミクスが存在するときに,社会的効率性の向上が示された.すなわち,「開放的関係」において,社会の多様性が維持され,「閉鎖的関係」において,その望ましい関係が短期で終わらずに保護され,かつダイナミクスによって選択過程が果たされることによって,内生的な利得の向上が実現する.ただし,選択過程が機能するには,ランダムな「閉鎖的関係」の解消確率が十分に小さくなければならない.これまでは,開放的な社会関係(「一般的信頼」)と閉鎖的な社会関係(「コミットメント」)が対立的にとらえられてきた(山岸 1998).しかしながら,現実的にはその双方が社会に存在し,佐藤(2005)も示すように,それらは補完的に作用し,社会の効率性の向上に双方が寄与できるのである.

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© 2007 数理社会学会
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