理論と方法
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原著論文
Transitions Approachによる教育達成過程の趨勢分析
 
荒牧 草平
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2007 年 22 巻 2 号 p. 189-203

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抄録

 本稿ではRobert D. Mareが提案し、教育達成過程の実証分析で国際的に事実上のスタンダードとなってきた、通称Mareモデルとその応用モデルによる分析(Transitions Approach)を通して、わが国の教育達成過程における不平等とその変動を実証的に明らかにするとともに、不平等生成に関する理論の目指すべき方向性について検討した。分析の結果、先行研究において繰り返し確認された階層効果逓減現象が、わが国の場合は戦前の一定期間にのみ認められること、中等教育機会の平等化と高等教育機会の不平等化の同時進行は、戦後の高学歴化期ではなく戦前における中等教育のマス化に関わって生じたこと、中等教育であれ高等教育であれ格差の拡大は上位層による希少財の先取りと関わって生じた可能性のあること、MMI仮説の主張する上位層の飽和による平等化がわが国の場合には必ずしも認められるわけではないこと等が明らかとなった。

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© 2007 数理社会学会
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